ICT教育

タブレット授業の先行事例 現場でわかったWi-Fi選びの条件――聖望学園中学校公開授業レポート

日本のICT教育について、政府、文部科学省、総務省が推し進めようとしていることを、以前紹介しました。そのシリーズのなかで、自治体や学校が取り組む教育の情報化の事例を取り上げましたが、そうした先進的な取り組みは、教育現場でどのように実践されているのでしょう。実際どんな授業が行われているのでしょう。


印刷用PDF(A4)はこちら


2017年4月20日、埼玉県飯能市の聖望学園中学校にて、メディア向けの公開授業が実施されました。その模様をレポートし、実際のICT授業とそれを実現する環境の整備についてお伝えします。

■「一人一台タブレット」を実現する聖望学園中学校

1918年に埼玉県で最初の私立の実業学校として始まり、1951年にキリスト教主義学校としてスタートした飯能市の聖望学園は、生徒の理解度を高めるべく積極的にICT教育について検討するなかで、2016年から、中学校でタブレット端末(iPad)を導入しました。生徒にタブレットを貸し出し、現在は一人一人が学校から自宅に持ち帰って家庭学習できるようにしています。同校の関純彦校長は、2020年にデジタル教科書が導入される見通しであることも見据えて、「生き生きとした学校生活を送れるようにICTを活用していきたい」と語ります。


「生徒がワクワクして楽しい授業を展開するように工夫している」(関純彦校長)

 

■ICT授業で重要になる「インタラクティブ」と「リアルタイム」

ICT化されると、学校の授業はどのようなものになるのでしょう。

聖望学園中学校の授業では、教室にWi-Fiのアクセスポイントが設置され、先生と生徒全員がタブレットを使用します。
生徒は先生が作成したワークシートをタブレットに受信し、画面に触れて、ワークシートに「書き込んで」いきます。これまで「先生から配られたプリントに生徒が書き込んで」いたところを、デジタルで実現しているのです。

授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」を使用し、各自がタブレットにタッチペンや指で書き込む

そのように自習した内容は授業内で共有して学習を深めます。この点は特に、タブレット学習だからこそ可能になった点と言えるでしょう。
先生は、生徒の理解度や進捗を確認できます。生徒の回答や状況を即座に確認し、それに合わせて柔軟に授業を進めることが可能になります。
生徒間でも、グループワークで問題を解けた生徒が解けない生徒を助けるなど、意欲的に学習に取り組むことができます。自習で生じる個人差を活かしてアクティブラーニングにつなげているのです。

公開授業をした2年B組の担任でICT委員会委員長の永澤勇気先生は、こうしたICT授業で重視している点として、「インタラクティブ」と「リアルタイム」を挙げていましたが、まさに、リアルタイム性の高いインタラクティブな授業を実現していると言えるでしょう。

先生は生徒の回答を一覧で確認。「つまづいている生徒も見逃しません」(永澤先生)

 

■「I・C・T(いつも・ちょっと・トラブル)」を防ぐWi-Fiの条件とは

こうした革新的な授業は、ネットワークインフラが整ってこそ実現できます。永澤先生は、教育の現場で、ICTについて「I・C・T(いつも・ちょっと・トラブル)」などと言われるそうです。つまり、デジタルデバイスに関わるトラブルが悩みの種になるということですが、永澤先生はこの「I・C・T」を紹介し、実際の対応における留意点として、トラブルをいかになくしていくかが重要になると語っていました。

トラブルのなかで特に問題になるのが通信障害です。理想的なインタラクティブ授業も、リアルタイム性が損なわれては実現できません。私たちも日常生活のなかで、「通信が遅い」「つながらない」と感じる場面に頻繁に遭遇しますが、ちょっとした時間でもストレスになってしまうものです。もし授業で同じようにネットワーク状況が悪ければ、講義や生徒間の教え合いが中断され、もちろんストレスになり、集中力も途切れるなど、授業に支障を来たしてしまいます。特に学校の授業では、複数端末の同時通信が、止まったり速度がバラついたりすることなく実現されている環境が必要になるのです。

同校は、昨年度にiPadとWi-Fiを導入しましたが、時々通信が途切れるトラブルが発生していました。つながらない時には、黒板を併用するなどして対応していたといいます。そこでバッファローが依頼を受けて調査した結果、トラブルの原因は「DFS障害」であると考えられたため、同校ではその仮設を検証する暫定対策の後、最適な対策が可能な新製品「WAPM-2133TR」を一部で導入しました。
それ以降、以前のように突発的なトラブルに対応する必要がなくなったそうです。

DFS(Dynamic Frequency Selection)は、気象・航空レーダーなどの干渉があった場合の仕組みです。法律で義務づけられており、干渉しないよう60秒間無線をストップしなければなりません。WAPM-2133TRは、常時空きチャンネルを監視するアンテナを内蔵することで、DFS障害時に干渉しないチャンネルに即座に切り替える「DFS障害回避機能」を備えています。今回聖望学園で通信停止の原因となっていたのは、DFS障害でした。
また、レーダーの影響に限らず、学校で通信障害に関するトラブルには、「通信速度を確保できない」「速度にバラつきが出る」「アクセスポイント同士が電波干渉する」などが一般的にありますが、WAPM-2133TRは、トライバンド(3つの周波数帯の同時通信)と公平通信制御機能によって、安定した高速通信を実現しています。今後高校棟も含め、全校タブレット導入が見通される中、十分なスペックを持つ本製品の導入を学校、バッファロー双方で決めたとのことです。

学校に設置する無線LANを選ぶ際には、このように、気象・航空レーダーによる一時停波をも回避し、速度の安定した通信を保てることが条件になってくるのです。

聖望学園の周辺には航空レーダーを持つ施設が多い。当日はDFS障害の状況をモニタリングして展示。レーダー検知やチャンネル変更の状況で障害を回避した様子がわかった

 

■DFS障害回避でストレスフリーになったタブレット学習

実施された公開授業で扱われた教科は数学でした。同校の数学の授業は「講座」と「演習」がセットになっており、公開されたのは「演習」の授業でした。21名の生徒が小グループに分かれて机を突き合わせ、今回の学習テーマである一次関数について、グループワークで理解を深めます。

授業で生徒の回答内容を共有。黒板上部に、円形のWAPM-2133TRが設置されている


生徒たちは机を突き合わせ、グループで学習を深める

タブレットを使った授業はまだ目新しいものですが、生徒たちは慣れた手つきでタブレットを使っており、先生も生徒も入り混じって教え合っていました。手元のタブレットやグループワークに集中する時と黒板に注目する時が、しっかり分けられているようです。
そして、授業の間、通信障害は見受けられませんでした。この日、実際に他教室で行っていた測定では、午前中にDFSによる三度のチャンネル移動が発生していました。しかし、前述したような中断や遅延は起こらず、授業は円滑に進行していたのです。通信環境は、ストレスがないのはもちろん、意識せずに済めばそれが最も理想的ですが、そうした環境が整備されているようです。

永澤先生は、ICT活用については、まだまだ模索中だといいます。「数学がおもしろくなった」という生徒の反響はすでにあるものの、今後は成績として表れる習熟度もみながら、さらに進めていきたいとしていました。

今後、ますます増えていくであろうタブレット授業。聖望学園が直面した課題点やその解消に役立った環境整備の条件は、後続する学校の参考として、役立っていくことでしょう。

<参考資料>
バッファロー 文教ソリューション事例
聖望学園中学校高等学校
バッファロー WAPM-2133TR製品ページ

関連記事

  1. ICT教育

    日本が考えるICT教育って?【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子ども教育はどう変わる…

    シリーズ前回(第1回「昨今耳にするようになったICTって、そもそも何?…

  2. ICT教育

    「防災等に資するWi-Fi環境」 をきっかけとした学校へのICT普及

    ■総務省が、防災対策を目的に、Wi-Fi環境整備を計画昨年末、総務…

  3. ICT教育

    ICTで子どもの自立心を育てる【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子どもの教育はどう変…

    シリーズ前回(第3回「ICTを取り入れた授業の事例 」は、実際に行われ…

  4. ICT教育

    教育現場へのICT導入の障壁とは【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子どもの教育はどう…

    ■デジタル教科書の積極的な推進は困難?その理由とは“デジタル教科書…

  5. ICT教育

    ICTを取り入れた授業の事例【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子どもの教育はどう変わ…

    シリーズ前回 第2回「日本が考えるICT教育って? 」は、「ICT教育…

最近の記事

2017年6月
« 5月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
PAGE TOP