ICT教育

学校の無線LAN整備は、より実際的な課題に向き合うステージに――EDIXレポート

2017年5月17日~19日の3日間、東京国際展示場(東京ビッグサイト)にて、「第8回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」が開催されました。教育分野における国内最大の専門展である同展は、2010年のスタート以降、年々規模を拡大。今年は過去最高の800社が出展し、3日間で3万人を超す来場者を集めました。業務支援システム、ICT機器、デジタル教材、eラーニング、各種学校向けサービスなどが一堂に展示され、学校・教育関係者が来場し、それらの導入促進につなげる場になっていました。

バッファローはこのEDIXに出展し、教育の現場で、児童や生徒がタブレットを1人1台使用する授業を支える通信環境整備などについて提案しました。その中で、今年は、無線LAN(Wi-Fi)を活用した学校・授業づくりを実践されている学校・教育委員会の先生方の特別講演も開催されました。その模様をお伝えします。

■今年の注目は「1人1台」「防災」

出展ブース内の展示スペースでは、「校内無線LAN」「タブレット授業」「データ保全」の3つのテーマを立てて、解説するパネルや機器を展示。ブースを訪れた方々にスタッフが詳しく説明するほか、スタッフによるセミナーも実施して、教育現場のICT化推進について提案しました。

訪れた学校・教育関係者の方々に、先行事例で得た知見などを踏まえてスタッフが説明

▽平時にはタブレット授業を実現、災害時には通信環境を提供
3つのテーマの中で、近年特に注目されるようになり、今回焦点が当てられていたと言えるのが、「校内無線LAN」です。これは、無線LAN環境の整備に関連するテーマで、現在、大きく2つの点が課題となっています。

まず1点目は、タブレットを活用した授業などで重要になる、全校1人1台のタブレット同時使用に耐え得る無線LAN通信環境の安定化です。
アクティブラーニングやデジタル教科書などの普及にともない、現場で扱われるデータ量や通信量は大幅に増えていくことが予想されます。文部科学省が2016年に策定した「教育の情報化加速化プラン」の後押しもあり、児童生徒1人1台の教育用コンピュータ環境の整備が目指されていますが、これまでの機器では各教室で同時にタブレット授業が行われると、通信が途切れたり速度にバラつきが発生するなど、授業の進行に支障が生じてしまいます。

無線LANが安定しないと授業が止まってしまう(製品企画担当者セミナーより)

2点目は、非常時の防災拠点としての、住民への通信環境の提供です。当サイトでもご紹介しましたが、学校施設は、体育館や校庭などが防災の拠点となるため、非常時に、避難者に通信環境を提供できることが期待されているのです。

▽課題に対応した新製品。屋外設置対応機器も
こうした要件に対応した製品として、法人向けブランドAir Station Proのラインナップを紹介しました。2017年3月にリリースされた新製品「WAPM-2133TR」は、以下の3つの特徴によって上記のような課題に対応し、途切れることなく安定した高速通信を実現するといいます。
・トライバンド:3つの周波数帯の同時通信により転送速度をアップ。通信データ量の増大に対応
DFS障害回避機能:DFSによる通信停止も回避し、通信を保持
・公平通信制御機能:多数のタブレットの同時通信でもバラつきを抑えた通信を実現。動画再生でも、再生の遅延が生じにくい

また、災害時にフリーアクセス可能な通信環境を提供できる緊急時モードを搭載。一括管理による遠隔操作も可能になっています。

「WAPM-1266WDPR」は屋外設置対応機器で、WAPM-2133TRと同様DFS障害回避機能を搭載するほか、「学校内を丸ごと無線LANでつなげる」と打ち出しています。軒下など屋外への設置に対応する防水・防塵性能や体育館にも置ける動作保証温度対応で過酷な環境にも適します。

左から、WAPM-1266WDPR、WAPM-2133TR、WAPM-1750D。3種とも搭載する「公平通信制御機能」は、「授業中30秒以上の通信のバラつきが生じると生徒の集中力が途切れてしまう」という多くの先生の声をもとに開発されたという

■実践される先生方が、トラブルや解決策などを共有した特別講演

教育の現場での無線LAN活用は、すでに多くの先行事例があり、ブースでは、特に先進的な取り組みをされる学校・教育委員会の先生方による特別講演も実施されました。

▽配線工事の手間と費用を抑え、「eduroam」にも対応した安定した通信を実現
国立大学法人大阪教育大学 情報処理センター助教の尾崎拓郎先生は、同大学附属平野小学校の無線LAN機器入れ替え事例を紹介。
平野小学校では、通信環境改善に当たりバッファローの無線LANアクセスポイント(以下AP)「WAPM-1750D」を導入。安定した通信を、既存配線をそのまま使って配線工事の手間と費用を抑えつつ、「eduroam」(世界80カ国で利用されている教育研究機関を対象とした国際無線LANローミング基盤)にも対応したうえで実現する、という要件に、高性能なAPを導入する形で対応しました。
尾崎先生は、平野小学校でeduroamが開通し、教員養成大学である同大学と同等の環境を提供できるようになったことによって、教育実習生や、学外からの来校者の通信環境が改善されたことを大きく評価。実際の通信状況としても、「以前は通信に支障が発生していたが、WAPM-1750Dにして半年以上、つながらないというクレーム一切なく安定運用できている」としていました。無線LAN機器導入の際は、家庭用と業務用を区別することが重要だといいます。安価だからと家庭用の製品を選んでしまうと、ネットワーク構築の煩雑さ、干渉、セキュリティーの問題などに悩むことになるからです。

尾崎先生は「Wi-Fi機器は、家庭用の製品が安価で販売されているが、家庭用を選ぶと失敗する」と注意を促した

▽いち早く学校ICT活用教育を実践。小中全校全校の無線LAN整備を完了した日野市
日野市教育委員会ICT活用教育推進室の小林正明室長は、東京都日野市教育委員のICT活用教育の取り組みを紹介。前市長が、日本一を目指した学校ICT活用教育充実を決断した10年前から、同市の取り組みが始まったといいます。市立平山小学校は2009年度日野市教育委員会研究課題校に指定され、それ以降、産官学様々なプロジェクトを行う中で通信環境をレベルアップし、学級全員のタブレット授業をカバーできるバッファローの無線LAN機器を導入しました。
同市では、ICT環境整備として、学校へのタブレットPC導入を進めながら通信環境を整え、平成29年度には市内の小中全校(小学校17校中学校8校)で無線LAN整備が完了したといいます。小林室長は、「学校での利用促進には、校長先生のリーダーシップとメディアコーディネーター支援は欠かせない」と強調していました。

小林室長は今後について「学びの本質を深め、21世紀を切り開く未来を担う子供たちに取り組むため、新しい学びをますます進めていきたい」と語った

▽「一人一台タブレット」を実現する聖望学園中学校
タブレット授業の先行事例 現場でわかった無線LAN選びの条件――聖望学園中学校公開授業レポート
2017年4月にバッファローと公開授業を行った埼玉県飯能市の私立聖望学園中学校では、実際のICT授業とそれを実現する環境の整備について紹介。
同校では、生徒の理解度を高めるべく積極的にICT教育について検討するなかで、2016年から中学校でタブレット端末(iPad)とバッファローの無線LANアクセスポイントを全校に導入しました。ICT授業で重視している点として、「インタラクティブ」と「リアルタイム」を挙げ、グループワークで問題を解けた生徒が解けない生徒を助けるなど、意欲的に学習に取り組むことができると語る。


私立聖望学園 関 純彦校長・永澤勇気先生「ICTを活用した、リアルタイムなインタラクティブ授業の実践」

■2020年に向けて教育現場は変革期。教育ICT化の推進にともないニーズも変化

教育のICT化が進み、教育の現場では変革期を迎えています。現場への機器導入や、それを活用した教育方法や授業が試され、事例も増える中で、学校教育に携わる方々の関心や求められるものも変化してきています。

例えば、昨年のEDIXでは、教室内のタブレットPCを用いた授業に特に注目が集まっていましたが、今年は、教室から目線が広がり、学校全体、1人1台の教育用コンピュータ環境の実現や防災上の観点が、より検討されるようになっていました。より実際的な課題に向き合う段階に入ったと言えるでしょう。

そうした現状に合わせてブースで展開された、現場で起こったトラブルと解決策などの紹介は、機器導入や入れ替えを検討している学校・教育関係者にこそいち早く共有されるべき事項と言えるでしょう。先行事例のトライアンドエラーをもとに、課題に予め対応した環境整備が進むことで、教育のICT化がより円滑に進んでいくことを期待します。

<参考資料>
教育ITソリューションEXPO(EDIX)
バッファロー WAPM-2133TR製品ページ
バッファロー WAPM-1266WDPR製品ページ

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