国内No.1認知度(Fastask調べ)のアプリ分析プラットフォーム「App Ape」など、スマートフォンアプリ事業を主軸に展開するIT系スタートアップ企業「フラー株式会社」。2011年創業の若い会社ですが、近年はKDDIと子供向けスマートフォン利用管理アプリ「スマホスピタル for Family」を共同開発するなど、発展を続けています。
成長企業に“変化”は付き物。フラーも例外ではなく、今回は人員増加などを理由にWi-Fi設備を入れ替えることを決めたといいます。オフィスのWi-Fi設備変更にあたって、環境や機器選定の上で考えたポイントや施工時の手続きといった内容は、あまり表に出ることがありません。今回、フラー様のご厚意で、そうした導入プロセスを取材する機会をいただきました。
「検討編」「導入編」「運用編」の3編にわたってレポートします。今回は、初回となる「検討編」です。
オープンな風通しのクリエイティブ集団「フラー」
今回、取材の窓口となったのはフラーでエンジニアとして働く末田卓巳氏。末田氏を取材するのは実は2回目で、2016年8月はプライベートの活動として『「走るWi-Fiルーター」……。果たして、その正体とは!?』『ルーター芸人は天才ハッカー? それともアーティスト?』のインタビューをさせていただいた方です。フラーとは末田氏を通して出会いました。
末田卓巳(すえだ・たくみ)
1994年生まれ。岡山県出身。2010年、津山工業高等専門学校入学。在学中に高専プログラミングコンテスト優秀賞を受賞。2015年、津山工業高等専門学校卒業、フラー株式会社入社。「ルーター芸人」を自称し、趣味でWi-Fiルーターの改造を続ける。その活動をまとめたブログ記事「BuffaloルータをPCディスプレイにつなげた。」(2016年2月)、「走るBuffaloルータを作った。」(同年5月)が大ヒットし、Webエンジニア界隈で話題を呼ぶ。
――Wi-Fiリプレース(設備変更)についてうかがう前に、まずは「フラーはどんな会社?」というところから教えてください。
末田:フラーは高専(工業高等専門学校)卒業生が社員の半分以上を占める珍しい会社です。「ものづくりが好きな人たち」が集まっているのが特徴で、社員約50名(2017年5月 取材時点)のうち、クリエイティブ系の社員が半数にのぼります。
弊社の事業領域はアプリなどのデジタル領域ということになりますが、オフィスにある机や棚も全て社員と仲間で釘を打ち、DIYで作っています。そのため、1つひとつの高さが微妙に違ったりするのですが、みんな愛着を持って使っています。
ちなみに、私の趣味であるルーターの改造もオフィスにある自分の机で行ったのですが、弊社の「仕事さえちゃんとしていれば、ものづくりには寛容」というオープンなマインドに支えられ実現しています。
私も高専出身で、在学中にフラーのインターンを2度経験して、社風に惹かれて2015年に入社しました。社歴はまだ浅いですが、「ルーター芸人」と自称する通り、ネットワーク関連が得意ということで、社内ネットワークの担当に任命されました。
――フラーの事業内容を少し詳しく教えてください。
末田:主な事業は2つあります。スマートフォンアプリ分析支援事業の「App Ape(アップ・エイプ)」とスマートフォンアプリ開発支援事業の「Joren(ジョーレン)」です。
簡単に説明すると、App Apeはスマホアプリの利用者属性や利用動向などのデータを集計し、分析したデータを提供するサービスです。現在はLINE、DeNA、mixi、キャンディークラッシュのKingさんなどアプリパブリッシャーを中心に3,000社以上の企業に導入いただいていて、Fastask調べでは、アプリ市場調査・分析サービスで国内No.1の認知度という評価をいただきました。そのため、我々は「App Apeはアプリビジネスを行う上で欠かせないプラットフォームへと成長した」と自負しています。
もう1つのJorenはWebサイトをネイティブアプリ化するサービスです。私はApp Apeの担当で、情報を収集するためのソフトである「クローラー」の開発に携わっています。
App Apeのようにアプリの情報を提供するサービスは他にもありますが、UI・UXの品質や独自分析で要望に合わせたカスタマイズデータを提供するなど、他社と差別化をしているところが弊社の強みです。
1人平均4台のデバイスを所有。社員増加に伴いネットワークが不安定に
――本題に入ります。今回、Wi-Fi環境を変更しようと考えた理由を教えてください。
末田:弊社はもともと「約300平米のスペースでフルWi-Fi」の環境でした。しかし最近、社員が増えてきた影響で既存の環境ではネットワークが安定しなくなり、複数の社員からWi-Fiに対する不満の声があがっていたんです。
施工前、社内には家庭用のWi-Fiルーターを3台置いていた
スマホアプリ系のサービス企業であり、クリエイティブ関連の社員が多い会社ということもあり、社員1人につきノートPC・タブレット・スマホなど、1人で4〜5台のデバイスを所有しています。これを単純計算すると、社内には50人×4台=200台のデバイスがあることになります。
PC、タブレット、スマホなど、社員1人で複数のデバイスを使用
さらに今後も社員が増える可能性もあるので、「そろそろ家庭用のWi-Fiではなく、オフィス用のWi-Fiに切り替えて、快適なネットワーク環境を構築しよう」という話になりました。
――オフィスのWi-Fi設備を入れ替えることになったということですね。どのように新しい環境や使用する機器を決めていったのでしょうか?
末田:まずは外部に集中管理してもらう「クラウド無線LAN(Wi-Fi)サービス」か、「オンプレミス – 自社内管理のWi-Fi」か、この2つのどちらかで悩みました。
クラウド無線LANは2つのサービスを候補にしていました。1つはアクセスポイント(以下AP)のクオリティーは高いもののWebサイトの説明がわかりにくかったんです。私たちは現状に不満があり、一刻も早くWi-Fiを替えたいと思っていたので、サービス面で不安を感じました。
また、サイト上の事例を見てみると、全国展開しているチェーン店で採用されていることから「飲食店など規模が大きめで、かつWi-Fiの設定や技術面をお任せしたい会社向け」のサービスとわかり、今回は候補から外しました。
もう1つのほうは、できる設定や機能に不満はありませんでした。ただ、クラウド無線LANサービスはどうしても運用・サポートがサービス会社側依存となるので、弊社で開発などで利用する際にリアルタイムな設定変更ができるかなど、こちらでイメージする通りの運用ができるかが気になりました。コストが高いところもネックでした。
弊社の場合、当初から重視する点が「フレキシブルな運用が可能であること」「規模拡大にもスムーズに対応できること」「エンジニアの会社なので開発にも活かせること」と明確でした。
その点、オンプレミスの方が、クラウド無線LANサービスよりも要望に合致すると思いました。たとえばクラウドの場合、対応デバイスが増加するたびにアクセス制限やネットワーク構成に変更を加えようとすると、思わぬ時間やコストがかかる場合があります。一方で、オンプレミスであれば社員用とゲスト用のネットワークを分けるなどの細かい設定も素早く自由にできます。このような理由から、今回はクラウド無線LANサービスを候補から外すことにしました。
バッファローにした決め手はワンストップサービスである点、設定の簡易性
――「オンプレミス – 自社内管理のWi-Fi」と決めてからは、APはどのようなものを検討しましたか?
末田:中規模法人向けのAPで、かつ弊社で細かく設定ができるものに絞って検討しました。具体的には、バッファローを含むいくつかのメーカーのAPを候補にあげ、検討を進めました。
バッファローに決めた理由の1つは、グループで「ワンストップ」のサービスを行っている点です。見積もり相談、Wi-Fiカウンセリング、施工、保守まで、バッファローはブランド全体で一貫して提供していますが、他社の場合はサイトを調べても、誰が来てくれるのかわからないという不安がありました。
それ以前に、他メーカーはサイトを見ても「どこから問い合わせをしていいのかわからない」ということもありましたね。その点、バッファローは問い合わせフォームからスムーズに相談や交渉を進められて、施工もバッファロー・IT・ソリューションズの派遣する専門スタッフが来てくれると明記されているので安心感がありました。
それに加えて、バッファローのAPは設定をWebブラウザーでスムーズに行うことができます。家庭用のWi-Fiルーターの“設定しやすさ”が業務用にも反映されていて、バッファローの製品は総じてユーザーフレンドリーな印象があります。検討したあるメーカーのAPは、設定のハードルが高かったのですが、バッファローのAPであれば、仮に私が退社したり、ネットワーク担当から外れたりしても、マニュアルを作っておけば簡単に引き継げます。
個人的にも自宅でバッファローのルーターに昔から親しんできているので、その信頼も大きなポイントでした。総合すると、ワンストップサービス、設定の簡易性、信頼感、このあたりが決め手になりました。
次回の「導入編」では、数あるWi-Fiアクセスポイントの中から、「WAPM-2133TR」を選択した経緯や、施工前にバッファロー・ITソリューションズによって実施された現地調査「Wi-Fiカウンセリング」の内容についてうかがいます。
(取材・文:廣田喜昭)
<参考>