ICT観光

観光庁が推進。観光地域づくりの担い手として期待される「日本版DMO」

地域と協同して観光地域づくりを行う「DMO」

昨今、「DMO」という名称を見かけるようになってきました。DMOとは「Destination Management Organization」の略で、観光物件や自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域づくりを行う法人のことを指します。

観光振興の一環として公衆無線LANを地域に導入する際、自治体や地域の観光協会がバックアップするケースが多いですが。「DMO」が今後こうした「観光協会」の役割を担っていくと考えられます。

それを示す資料の1つに総務省が2015年7月に発表した資料「2020年に向けた社会全体のICT化推進について」があります。ここには、

2020年以前に日本全国でのサービスの提供が可能な、(ⅰ)無料公衆無線LAN(Wi-Fi)の整備、(ⅱ)スマホ・タブレット端末等による多言語音声翻訳対応、等について、日本版DMOとして選定された地域の観光・防災拠点において、訪日外国人旅行者が不自由なく確実に利用できるようにする。(P.2)

と記載されています。

DMOは欧米で先行普及している組織体で、国連世界観光機関(UNWTO)が定める旅行目的地の①観光資源、②観光インフラ、③アクセスの容易性、④人的資源、⑤イメージ、⑥価格の6つの魅力を高めて外部に発信するために、マーケティングや持続可能な環境の整備等を先導し、官民の壁を越えて調整を行う組織です。日本で公式に初めてDMOが取り上げられたのは、2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、DMOは、「戦略策定、各種調査、マーケティング、商品造成、プロモーション等を一体的に実施する、主に米国・欧州で見られる組織体」とされています。

日本でも次第にDMOに注目が集まるようになり、政府が打ち出した「日本再興戦略2015年改訂」では、「日本の観光のトップランナーとしてふさわしい地域の中から世界に通用する観光地域づくりとマーケティングを行う官民一体の観光地経営体(日本版 DMO)選定し、政策資源を集中的に投入する」と、日本版DMOの必要性について触れています。
さらに、「観光立国推進基本計画」には、「平成 32年までに世界水準 DMO を 100 組織形成する」と、2020年に向けたDMOの目標値も明記され、「DMO」の存在感が高まってきていると言えるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・DMOとは地域と協同して観光地域づくりを行う法人のこと。
・DMOは欧米で普及しており、日本でも、政府が「日本版DMO」を確立し、観光地域づくりを進めようとしている。

<参考資料>
2020年に向けた社会全体のICT化推進について
観光地域づくりにおけるDMOの役割
「日本再興戦略」改訂 2015
観光立国推進基本計画

観光庁が推進する「日本版DMO」

前述の「日本版DMO」とはどのようなものでしょう。観光庁のホームページでは、

地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人

と定義されています。

このような日本版DMOの形成・確立が必要な理由として、これまでの観光地域づくりに以下のような課題があり、それを解消する必要があることが挙げられています。

①関係者の巻き込みが不十分
②データの収集・分析が不十分
③民間的手法の導入が不十分

日本版DMOは、観光地域づくりを行う舵取り役として、これら3つの課題を解決することが期待されているわけです。
例えば、「①関係者の巻き込みが不十分」という課題に対しては、「ふるさと名物の開発」や「免税店許可の取得」、「市民ガイドの実施」などを行うことで、地域が一体となった魅力的な観光地域づくりを実現し、観光による地方創生が実現すると考えられています。

日本版DMOの仕組み

日本版DMOは「登録制」で、観光庁に登録すると、関係省庁連携支援チームを通じて支援を受けることができます。登録対象は、地方公共団体と連携してマーケティングやマネジメント等を行うことにより観光地域づくりを担う法人で、登録の区分が以下の3つに分けられています。

広域連携DMO:複数都道府県に跨がる区域(地方ブロック単位)を一体とした観光地域として、観光地域づくりを行う組織
地域連携DMO:複数の地方公共団体に跨がる区域を一体とした観光地域として、観光地域づくりを行う組織
地域DMO:原則として、基礎自治体である単独の市町村の区域を一体とした観光地域として、観光地域づくりを行う組織

指定された日本版DMOには、

①多様な関係者の合意形成
②各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立
③関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション

という3つの役割と、観光地域づくりの一主体として実施する個別事業が求められます。

<ココまでのまとめ>
・日本版DMOにはこれまでの観光地域づくりの課題解決が期待されている。
・日本版DMOは観光庁への登録制。登録後は関係省庁連携支援チームを通じて支援を受けることができる。

<参考資料>
観光庁 | 日本版DMOとは?
観光庁 | 日本版DMO形成・確立の必要性

「日本版DMO」がインバウンドを促進する

最後に、日本版DMOの先行事例を、日本観光振興協会が運営する「DMOナビ」でみてみましょう。

滋賀県の2市4町が参画する「一般社団法人近江ツーリズムボード」は、登録区分では「地域DMO」に所属する団体です。

「観光消費額が低い」という課題を解決するためにインバウンド誘致が必須との考えから、一般社団法人近江ツーリズムボードの前身である「近江インバウンド推進協議会」が2015年9月に設立されました。その後、2016年2月に日本版DMO法人候補の第一弾として登録、4月に名称を変更しています。

一般社団法人近江ツーリズムボードの取り組みの1つに「フードカー構想」があります。インバウンドに訴求するためには「地域の食の魅力を発信することは不可欠」と考え、少ない初期費用で実現できるフードカーを使って地域の食の魅力強化を図ろうとする取り組みです。
ホームページには「鉄板仕様」「カフェ仕様」「バー仕様」と3タイプのフードカーが紹介され、あわせてレンタル料金(1日パック1万円~)が詳しく記載されています。近い将来、近江の街は地元の食材を使った料理を売るフードカーで溢れる街になっているかもしれません。

上記の例のように、「日本版DMO」はインバウンド対応を促進していく可能性があります。

今年3月には、東北地方のインバウンド観光開発・プロモーション事業を展開する株式会社VISIT東北とインバウンド誘致・ツアーコンテンツ造成事業を行う株式会社侍が、宮城県南4市9町を対象とした日本版DMO『一般社団法人宮城インバウンドDMO』を設立したことも話題になりました。

現時点で日本版DMOの登録数は157件(広域連携DMO 7件、地域連携DMO 69件、地域DMO 81件)。日本版DMOが今後、観光振興にどのように貢献していくのか、注目されます。

<ココまでのまとめ>
・日本版DMOはインバウンド対応を促進していく可能性がある。
・現在、日本版DMOの登録数は157件。近江ツーリズムボードは地域の食の魅力強化を図っている。

<参考資料>
DMOなび | DMO先進事例に学ぶ ケース4:一般社団法人近江ツーリズムボード (地域連携DMO)
近江ツーリズムボード
VISIT東北『一般社団法人宮城インバウンドDMO』設立
観光庁 | 日本版DMO候補法人の登録一覧

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