ICT教育

2020年の新学習指導要領の注目点「プログラミング教育必修化」とは

産業革命時代のためのプログラミング教育

2020年の新学習指導要領では、デジタル教科書の導入は決定されず、今後検討を続ける形になりました。一方で、ICT教育関連でもう一つ注目されているプログラミングの必修化は進められることになりました。(どちらもICTが関連するテーマですが、デジタル教科書はICTの教育への利活用であり、プログラミング教育はICTに関する教育であるという違いがあります。)

今回は、導入される「プログラミング教育」がどのようなものなのか、みてみましょう。

内閣府が昨年6月に発表した資料「日本再興戦略 2016―第4次産業革命に向けて―」によれば、プログラミング教育は、小学校で2020年度から、中学校で2021年度から、高等学校で2022年度から、それぞれ始まります。本記事執筆時点の2017年からもう約2年半後には、小学校でプログラミング教育が開始されることになります。

そもそも、なぜプログラミング教育が必修化されるのでしょうか?

同資料では、キーワードとして「第4次産業革命」を掲げています。第4次産業革命とは、「IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する」ようになる時代であり、その実現によって、技術、ビジネスモデル、働き手に求められるスキルや働き方に至るまで、経済産業社会システム全体が大きく変革されると予想されています。
若者にとって、それは「社会を変え、世界で活躍するチャンス」です。そこで政府は、若者が第4次産業革命時代を生き抜き、主導できるよう、プログラミング教育を必修化して、IT を活用した個別化学習を導入することを決定した、としています。

<ココまでのまとめ>
・プログラミング教育の必修化が、小学校は2020年度からスタートする。
・その背景にあるのは「第4次産業革命」。今後、経済産業社会システム全体が変化することが予想されている。

<参考資料>
「文部科学省 デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ
内閣府 日本再興戦略 2016

小学校ではプログラミング思考を育み、中高では実際のプログラミングを

文部科学省が昨年6月に発表した資料「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」をみると、プログラミング教育が具体的にどのようなことが目指されているのかわかります。

小学校でプログラミング教育は、「コンピューターに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、(中略)時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない」と定義されています。
そのうえで、
・身近な生活でコンピューターが活用されていると知ること
・問題の解決には必要な手順があることに気付くこと
・コンピューターの働きを自分の生活に生かそうとする態度を身に付けること
などを具体的な指標にしています。

例えば、理科の授業では、電気の性質や働きを学ぶ際、エネルギーを効果的に利用するためにさまざまな電気製品にはプログラムが活用され条件に応じて動作していることに気付く学習などが検討されています。

中学校では、「社会におけるコンピューターの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるようにすること」、高校では「コンピューターの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピューターを活用できるようにすること」と目標が設定されています。

中学校では技術・家庭科において、学校では情報科においてプログラミング教育が実施される予定です。中学校技術・家庭科技術分野の「情報に関する技術」では、コンテンツに関するプログラミングを指導内容に盛り込んでプログラミングに関する内容を倍増させることが、また高校では情報科に共通必履修科目を新設し、全ての高校生がプログラミングを問題解決に活用することを学べるようにすることが、それぞれ検討されています。

実際の授業はどのようなものになるのでしょうか。実施されている先行事例をみてみましょう。

墨田区隅田小学校では、株式会社セールスフォース・ドットコムとNPO法人CANVASが実施するSTEM(Science・Technology・Engineering・Mathematics)教育プロジェクトを通して、プログラミング学習を行っています。

授業では「基本操作の確認」「プログラミングとは?」「マインクラフトの説明」など、基礎を押さえたうえで、身近なゲーム「マインクラフト」などを使って、プログラミングへの興味を育もうとしています。

<ココまでのまとめ>
・プログラミング教育は、小学校と中学校・高校でそれぞれ定義され目指す姿が示されている。
・プログラミング教育の先行事例では、身近なゲームを通した授業などが行われている。

<参考資料>
文部科学省 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
プログラミング教育普及プロジェクト 総合学習の授業(全15回)×プログラミング学習墨田区立隅田小学校

デバイスや通信環境などの整備に課題

開始が目前に迫るプログラミング教育ですが、全ての地域の子どもが同レベルの授業を受けるためには、「教育人材の確保」や「設備面での環境整備」が課題です。

設備面に焦点を当てると、文部科学省は2013年の第2期教育振興基本計画で、教育用のPCを児童3.6人に1台の割合で配備することを目指し、2014年度から年1600億円以上を地方交付税に盛り込み自治体を支援してきましたが、2016年3月末時点では、6.2人に1台にとどまっています。

PCに限らず、前述の「日本再興戦略2016」ではノート型コンピューターやタブレット、また、昨年11月に文部科学省が発表した資料「教育ICT教材整備指針(仮称)策定に向けて」では電子黒板や実物投影機など、さまざまなデバイスの必要性について触れています。

電子黒板の整備率は10年前の2006年は1.7%だったのに対して、2016年3月時点では21.9%(前年比2.5%増、台数は11,653台増の102,156台)と増加していますが、2020年度までにどこまで整備することができるでしょう。

また、これらのデバイスをプログラミング授業で使用するうえで「通信環境」も必要です。前述の「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」には、「全ての教員や関係者が活用できるようなプログラミング教育のポータルサイトを構築していくことも考えられる」「学校現場がインストールせずに使うことのできるWebサービスなど、活用しやすい工夫が求められる」など、ネットワークを活用した運用が検討されています。

「日本再興戦略2016」では、「無線LAN の普通教室への整備を2020年度までに100%を目指す」ことをKPIとして設定していますが、2016年3月時点では普通教室の無線LAN整備率は26.1%でした(校内LAN整備率は87.7%)。

スタートまで間もないプログラミング教育開始に向けて、急ピッチの環境整備が求められます。

<ココまでのまとめ>
・プログラミング教育を必修化するためには、デバイスや無線LANなど、環境整備が必須。
・現状ではまだ全ての子どもが同レベルの環境でプログラミングを学べる環境にはなっていない。2020年度までにどこまで進むか、注目される。

<参考資料>
文部科学省 平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
文部科学省 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
文部科学省 教育ICT教材整備指針(仮称)策定に向けて

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