ICT教育

ICT活用教育を促進する障壁に。教育現場での著作物利用の現在

デジタル時代に求められる教育者の情報モラル―著作権―

ICT利活用教育を実施していくにあたり、教材(教育コンテンツ)が重要になることは、以前も触れましたが、教材と一口に言っても、さまざまなコンテンツがあります。もちろん教科書は主教材になるでしょう。それ以外にも、教育の現場では、副教材、補足資料、ワークシートなど、補助的なコンテンツがよく用いられているものです。
デジタルの時代となり、インターネットが普及した現代、ICTの利活用によって、テキストコンテンツだけでなく画像や動画などを活用し、教材を作成し共有しやすくなってきています。こうした情報を利用し、教育に取り入れる際、必要になる情報モラルはどのようなものでしょう?

大きな問題になるのは著作権処理です。
例えば、教材や問題のプリント配布は、日常的に行われているものですが、著作権者に許諾を得ていない著作物について、
・授業に直接関係のない者に対しても配布するために著作物をコピーする
・ワークブックやドリル教材などをコピーして配布する
といったことは、認められていません。習慣から考えると問題ないように思える場合もあるでしょうから、注意が必要でしょう。

授業の中心となり、共通教材として用いられる教科書で、そのコンテンツの著作権が問題になることは基本的にないでしょう。しかし、副教材など補助的なコンテンツは、学校や教師が個別に授業や学習を工夫してより良くしようとして作成されるものです。そうした補完的な教材によって、教育内容が充実し、生徒の理解が促されるといった面も大きいです。
デジタル化が進み、さまざまなデータを教材作成に手軽に利用しやすくなった現在は、こうした補完的な教材を作成する際に著作物を利用する機会が増す状況と言え、著作物として保護されている情報コンテンツを、知らずに使用して著作権を侵害してしまうおそれもはらんでいると言えます。まずは現在の法令を理解し、正しく情報を利活用することが重要でしょう。

<ココまでのまとめ>
・デジタルの時代となった現代、学校や教師はICTの利活用によって、さまざまなデータを活用して教材を作成しやすくなった
・教材作成の際、情報モラルとして著作権に留意することが重要

比較的制限の緩い教材への著作物利用だが、デジタル時代だからこその課題も

著作権について確認しておきましょう。
小説、絵、音楽などの作品の複製は、原則として著作権者の許諾を得る必要がありますが、学校などの教育機関では、著作権法第35条(学校その他の教育機関における複製)によって、その公共性から、例外的に著作権者許諾なしで授業の範囲であれば、自由に利用することができるとされています。

文化庁が公開している「学校における教育活動と著作権」では、著作権法第35条をはじめとする著作権法の抄録とあわせて、著作権者の了解なしに利用できる条件を明示し、具体的な例を交えて「学校における例外措置」を解説しています。
その中から、特にICT活用教育の実践時に関連の深いものをいくつかみてみましょう。

〇ある授業(「主会場」)で教材として使われた他人の作品等を遠隔地(「副会場」)に同時中継する
×主会場で行われた授業を録音、録画したものを、後日副会場に送信する、または誰でも視聴できるように送信する

〇小説や社説などを用いた試験問題をインターネットなどによって、送信して出題する
×小説や社説などを用いた試験問題をホームページに掲載し、送信する

公衆送信(インターネット送信等)については、上記のように遠隔地の2カ所で同時に授業を行う場合とされています。学校のサーバーにアップロードすることなどは、原則権利者の許諾が必要とされるため、例えば、「ある教師が作成した優良教材を学校のサーバーにアップロードして共有する」といったケースは、学校における例外措置にあたらないと考えられます。

<ココまでのまとめ>
・教育機関はその公共性から、例外的に著作権者許諾なしで一定の範囲で自由に利用することができる
・この「学校における例外措置」にも制限があり、注意が必要

<参考資料>
学校における教育活動と著作権
学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン

デジタル化やICTの利便性を活かし、より良い教育を

教育機関における著作物利用については、著作権が教育のために権利が制限されている形になっていますが、ICTの利便性と両立しにくいものもあるなど、実際の教育現場での運用が難しそうです。
政府の「遠隔授業に関する著作権制度について」では、ICT活用教育における著作物利用の現状の問題として、
・著作権処理を円滑に行えない
・権利処理の要否が判断できない
といった点を挙げています。

こうした問題について、文化審議会著作権分科会は報告書の中で、大学でのヒヤリング内容として、「著作権者の確認等に手間と時間がかかり,講義準備に支障を来すことから,できるだけ第三者の著作物を使用しないように教員に勧めている」など、教育の現場で、著作権の問題で適切な著作物が利用できない、あるいは、著作権処理をクリアするために負担が生じている実態が報告され、ICT活用教育における著作物利用の円滑化のために権利制限規定の整備などを課題として挙げています。もちろん著作権は重要ですが、たしかに、教材作成で著作権処理をしようとすると、負担が大きくなることは想像に難くありません。

この報告書を受け、政府は「知的財産推進計画2017」の中で、
「授業の過程における著作物等の公衆送信の円滑化について、新たに補償金請求権付の権利制限規定を整備するなど必要な措置を講ずる。教員・教育機関間の教育目的での教材等の共有については、より詳細なニーズを把握した上で、引き続き検討を行う」
とし、具体的な施策検討を行っています。

より良い教育のために質の高い著作物が利用されるのは望ましいですが、無理の生じない利用しやすいルールが整備されることがそれを促進します。デジタル化やICTの利便性を活かした教育の達成が求められています。

<ココまでのまとめ>
・教育の現場では、ICT活用教育における著作物利用について、著作権処理を円滑に行えないなどが課題になっている
・こうした課題について文化審議会の報告を受け、政府は具体的な施策検討を行っている。

<参考資料>
遠隔授業に関する著作権制度について
文化審議会著作権分科会報告書
知的財産推進計画2017

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