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新学習指導要領に向けたICT環境と、整備の課題を先行者尋ねる教師を手助けする仕組み――「Edvation × Summit 2017」レポート

2017年11月5日~6日、東京都千代田区で、「Edvation × Summit 2017」が開催されました。「Edvation × Summit」は、テクノロジーを活⽤した教育イノベーション「EdTech(エドテック)」の推進を目指す国際カンファレンス。⽇本の産業界や教育関係者が集い、海外で活躍するEdTechプレイヤーも多数来日して、国内外の先進事例や、多様化した教育ソリューションの紹介などが行われました。

会場となった2つの施設のうち、海運クラブ国際会議場では、国内外ゲストスピーカーによる基調講演とパネルディスカッションが開かれ、麹町中学校では、講演やパネルディスカッションのほか、企業の展示やワークショップなどを通じて教育ソリューションが紹介されました。6日には麹町中学校の生徒たちも登校し、VR系のプログラミングやロボティクス、電子工作体験、教育版マインクラフトなどが体験できるワークショップに参加。ゲームを楽しみながら学べる形式の体験型学習は予約でいっぱいになるほど盛況でした。
バッファローもこのイベントに協賛。イベント中は無線LANを中心とした提案や議論を実施し、パネルディスカッションおよびブース出展を催しました。

海運クラブ国際会議場では基調講演やパネルディスカッションが行われた

体育館や教室には様々なブースがあり、麹町中学校の生徒たちも体験学習に参加

■実践者・管理者・事業者、それぞれの立場から語ったICT環境整備のポイント

次期学習指導要領では、校内無線LAN100%整備やプログラミング教育など、校内のICT設備環境は変化することが想定されています。「次期学習指導要領に向けた次世代校内 ICT 環境 ~無線 LAN、ネットワーク、セキュリティ~」と題されたパネルディスカッションでは、先行してICT環境整備に取り組まれる先生方が、実現の過程で重要だったことや導入メリットなどを明かし、意見を交わしました。

教育家庭新聞西田理乃編集長(左端)がモデレーターを務め、パネラーとして、聖望学園中学校・高等学校の関純彦校長先生、柏市教育委員会の佐和伸明副参事、バッファロー ネットワーク事業部の磯畑が登壇

▽実践者:1人1台iPad環境を実現する聖望学園

聖望学園は、2016年にまず中学校からICTを活用した教育を本格導入しました。1人1台のiPadと無線LAN環境、さらにプロジェクターを利用した電子黒板を使って、リアルタイムで双方向通信が可能な授業を展開しています。ICT利活用で、従来の教師から生徒への一方向の展開だった教育は、教師と生徒、さらには生徒同士がリアルタイムに、かつインタラクティブ(双方向)に内容を確認できるようになり、授業が活性化されたのを実感していると言います。
ICT導入で重要になった点は、「途切れずにデータのやり取りができること」。「そうでないと生徒たちがつまずいているところに気がつけず、実際にも授業に支障を来たします。通信の負荷は高まりますが、常にデータがやり取りできる状態が必要になります」と、授業における通信環境の要件について語りました。

関校長は過去に情報環境委員を務めており、情報関連に造詣が深い

▽管理者:小中学校全学年でプログラミング教育を取り入れた柏市教育委員会

全国でもいち早く電子黒板を取り入れ、2017年度からは全小学校でプログラミング教育も開始した柏市。柏市教育委員会副参事の佐和伸明氏は、現状について、「タブレットのグッド・プラクティスを示し、普及していく段階」だと語ります。子供同士がやり取りできることによって学びが深まっていくプロセスを、授業にタブレットを取り入れた例で示し、教育委員会から各校へそうした教育方法を提案しているところなのだそうです。プログラミング教育では、「それ自体が情報リテラシーの一つであり、全ての子供が身につけるべきものである」という考えから、2020年の新学習指導要領の実施に先駆けて、全小学校の小学4年生全クラスで授業を展開しているといいます。
次期学習指導要領に向けては、ICTを使ったアクティブラーニングやプログラミング教育の実現、そしてそれを全校で共有、実現できる仕組みをつくっているとのことでした。

佐和氏は「ゴールを見据えて環境を整えることが大事」と訴えた

▽事業者:通信障害を解消し、公平通信の実現を目指すバッファロー

バッファローは近年、学校向けに無線LAN環境導入の提案をしており、学校に対して頻繁にヒアリングを行っています。その中で聞かれるのは、無線やネットワークの障害が発生し、授業が停滞してしまうという声。ネットワーク事業部の磯畑は、バッファローが、「いかにきちんと機器を動作させるか」に重きを置き、特に公平な通信を意識していることを説明。学校向けに提案している無線LANアクセスポイントによる40台のタブレット端末への動画配信実験で、遅延なく動画を再生できる様子を紹介しました。
電波干渉など様々な障害に対して、それをいかに回避させるかというところで常に新たな製品の機能開発を行い、提案していると語りました。

「今後どんな授業が生まれてくるかわからない。先生方に意見をいただきながらより良い製品開発を目指す」と磯畑

▽教育現場で使用するICT機器の課題は「日常的に使える環境」

関校長、佐和氏が必要と考えるICT機器設置に関する課題は、共通して「日常的に使えること」という話に見えました。機器の機能上としての安定性もありますが、それらを使う人のモチベーション維持といった側面もあります。
聖望学園では設置当初通信が途切れることがしばしばあり、調査の結果、近辺に航空自衛隊基地があることによるDFS(Dynamic Frequency Selection:気象レーダーや軍事レーダー、航空無線で使われているチャンネルの電波の使用を禁止すること)障害が原因であることが判明しました。DFS障害回避機能を備えたバッファロー製品を設置して安定しましたが、使用中にデータ通信ができなくなると生徒はモチベーションが下がり、教員もICTを活用した授業に対する意欲の低下につながっていたといいます。
佐和氏は、「普通教室で日常的に使える環境が必要」と指摘。求められているのは、子供たちがタブレットなどでICTを活用し、アクティブラーニング型の授業を行い、情報活用能力を高めていくような活動で、そのためには機能が多すぎる必要はないとし、「本当に教師の目線に立った必要最低限の機能であれば先生方も戸惑いがないし、高いスキルを求められないですよね」と語っていました。
磯畑はこれを受け、「そもそも通信にトラブルはあってはいけない。我々が提供するものはインフラ。使えて当たり前のものを、安価に提供することを意識しています」と話していました。

▽情報教育、ICT活用は2020年が大きなチャンス

ICT利活用教育分野の先行者として伝えたい課題、提案として、関校長は「ICTがあることを前提としたカリキュラム作り、教員養成」を挙げます。アクティブラーニング、ICTを使った授業は従来と異なる授業形態。アナログの授業をデジタルに置き換えるだけでは伝わらないことがたくさんあるため、ICT機器があることが前提の教員養成、カリキュラム作成が必要だと訴えました。
佐和氏は「情報教育、ICT活用は何年も言われてきましたが、今こそ根付かせなければいけない時期。2020年が大きなチャンスになるはずなので、そういう仕組みをつくっていきたい」と言います。全部の学校が対応できる仕組みは必要最低限の知識で活用できるICT機器と、先生方が困ったときに手助けする仕組み。力の入れ方が偏りやすいモデル校といった指定をあえて作らず、どこの学校でも普及できるプランを考えていきたいと意欲を語りました。

■Wi-Fi、タブレット、電子黒板を利用した「考えを共有・共創できる教室」を提案

EXPO展示ブースでは、バッファローはタブレット端末に表示された内容を電子黒板で共有し、リアルタイムに考えを交換し合える授業スタイルを提案しました。

無線LAN・タブレット・電子黒板を利用した、リアルタイムに考えを交換し合える授業を提案

現在多くの学校で導入済みの電子黒板はネットワークに対応していないことが多く、先生側がパソコンなどの機器で見せたい教材を提示するなどの用途が主でしたが、ネットワーク対応HDMI変換ディスプレイアダプターLDV-HADを使えば、画面を分割して4台分のタブレット画面を同時に映し出すことができ、既存の設備を使って安価に生徒との共同学習を実現できます。教員用のアプリしだいで映し出すものを変えることも可能です。
ブースに訪れた生徒たちは「お題」に合わせてタブレット端末に絵を描き、それが同時にディスプレイに表示される仕組みを体験していました。例えば、「あめ」や「くも」とった同音異義語をもつ言葉に対して、生徒たちが思い浮かんだ「雨」や「飴」の絵をお互い見比べ、その違いの発見をさせるものです。

お題に合わせてタブレット端末に絵を描くと、目の前のディスプレイに表示される

■2020年に向けてICT活用は加速中

2020年に取り入れられる予定の学習指導要領に向けて、教育現場ではいかにしてICT活用やアクティブラーニングを取り入れていくかを模索しています。
体験ブースの子供たちの真剣な顔や明るい笑顔。それを支える教育現場の環境づくりについて、このようなイベントを通して理解されていくことが期待されます。

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