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ベトナムは1人当たりの旅行支出トップ。インバウンドの伸びが期待される東南アジア地域の訪日外国人の傾向

■タイは訪日外国人数、旅行消費額とも6位――東南アジア地域の訪日状況

前回の記事では、東アジアの国々の訪日旅行者数、消費額などについてお伝えしました。今回は東南アジア地域(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムにインドを加えた7カ国)の訪日状況やその特徴をまとめます。

観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(平成29年7-9月期)によると、訪日外国人旅行者数744万人中、東南アジアは約50万人(構成比6.8%)。旅行消費額1兆2,305億円中、東南アジアは839億円(構成比6.8%)となっています。
7カ国の内訳をみてみると、訪日外国人旅行者数は、タイが14.2万人(構成比1.9% 全国籍中6位)、ベトナムが7.5万人(構成比1.0% 全国籍中9位)で、残りの国々は構成比で1.0%未満(3~7万人)です。
訪日外国人旅行消費額は、タイが222億円(構成比1.8% 全国籍中6位)、ベトナムが194億円(構成比1.6% 全国籍中7位)で、残りの国々は1.0%未満(60~100億円)です。
ベトナムは、1人当たりの旅行支出が全国籍で1位の約26万円(平均は16万5,412円)。後述しますが、その中で飲食費と買物代が同じく1位であり、長い訪問期間(平均泊数が全国籍で1位)にともなう費目への支出がうかがえます。

<ココまでのまとめ>
・東アジア地域は、訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行消費額で7%弱を占めている。
・タイは訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行消費額、全国籍中6位。ベトナムは1人当たりの旅行支出が全国籍中1位。

<参考資料>
観光庁 【訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析】平成 29 年 7-9 月期 (速報)

■どの国も多くの月で訪日数過去最高を記録。旅行・レジャー目的は比較的低い

東南アジアは、地理的に東アジアに次いで日本に近い地域ですが、上記調査で、訪日目的に占める「旅行・レジャー」は東アジアより比較的低いです。一方で「業務(展示会・見本市/国際会議/企業ミーティング/研修/その他ビジネス)」目的の割合は、インドが全国籍で最も高く70.7%となっていて、タイ(23.2%)を除く5カ国も30%台。「旅行・レジャー」約8割、「業務」約1割の東アジアと比べると、かなり違います。

日本政府観光局(JNTO)が公表している「市場動向トピックス」によれば、2017年内に7カ国とも多くの月で過去最高の訪日者数を達成しており、今後も訪日者数の増加が期待されるところです。2017年4月には、シンガポールとマレーシアを除く5カ国で単月最高を記録しています。

訪問地については、平成26年の「訪日外国人消費動向調査」で、東南アジアの訪日者の53%が地方を訪問していると報告されています。東アジアに比べればその割合は低いものの、欧米やオーストラリアと比べて「地方のみ訪問」の割合は高く、地方訪問者の中で、「2大都市圏と地方訪問」は山梨県や静岡県、愛知県、「地方のみ訪問」は北海道 や福岡県への訪問率が高い、と指摘されています。

旅行者の消費については、ベトナムの高さが目立つものの、金額の低い国が多く、1人当たりの旅行支出が、韓国、台湾に次いでマレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、タイの順に金額が低く、全国籍(16万5,412円)より低額です。
内訳をみると、飲食費は、ベトナム以外は平均(3万4,829円)以下で、総額に占める割合も平均より低額。また、娯楽・サービス費は、7カ国とも平均(5,541円)以下です。

<ココまでのまとめ>
・東南アジアは、地理的に東アジアに次いで日本に近いが、東アジアに比べて訪日目的に占める「旅行・レジャー」は比較的低く、「業務」目的の割合が高い。
・2017年内に7カ国とも多くの月で過去最高の訪日者数を達成している。

<参考資料>
観光庁 訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 平成 29 年 7-9 月期 報告書
日本政府観光局 市場動向トピックス
訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成26年訪日外国人観光客の地方訪問状況

■リピーターの多いシンガポール、買物代の割合が高いベトナム――国別の特徴と施策事例

外国人の訪日状況全体を俯瞰して上位の国をみると、先述のようにタイとベトナムが目立ち、個々の国別に傾向も目立ちます。東南アジアの7カ国から訪れた人々の国から訪れた人々の傾向や消費行動について、ここまでに挙げた資料と観光庁の宿泊旅行統計調査を参照し、国ごとにより詳しくみてみます。

<タイ>
・都道府県別で、福島県、埼玉県、山梨県、山口県などで宿泊している割合が高い(山梨県では中国、台湾に次ぐ3位)。

<シンガポール>
・リピーターの割合が高い。(2回目以上が79.1%。香港、台湾に次いで全国籍中3位)。
・観光・レジャー目的での「有償での住宅宿泊」利用率が、全国籍中最も高い(39.5%)。

<マレーシア>
・北海道で宿泊する割合が高い(東京都に次いで2位)。

<インドネシア>
・観光・レジャー目的での「有償での住宅宿泊」利用率が、全国籍中3位(29.7%)。

<フィリピン>
・平均泊数が25.5泊と長い(全国籍平均11.3泊)。
・訪日旅行全体の満足度、日本への再訪意向がアジアの国々の中で最も高い。

<ベトナム>
・平均泊数が36.6泊と全国籍中最も長い。観光・レジャー目的の泊数も長く13.5泊(全国籍平均6.2泊)。
・愛知県で宿泊する割合が高い(東京都、大阪府に次ぐ3位)。
・旅行手配方法は、個人旅行パッケージ利用率が全国籍中最も高い。
・1人当たりの旅行支出に占める飲食費と買物代が全国籍で1位(買物代は11万9,310円で、総額の46%を占める)。

<インド>
・観光・レジャー目的の割合が全国籍中最も小さく(12.1%)、業務の割合が最も大きい(70.7%)。
・平均泊数が26.7泊で全国籍中ベトナム、ロシアに次いで3位。観光・レジャー目的の泊数は14.5泊でドイツ、フランスに次いで3位。
・ひとりの訪日の割合が高く、全国籍中ドイツに次いで2位(62.6%)。
・旅行手配方法は、個別手配の割合が高い。
・1人当たりの旅行支出に占める宿泊費の割合が高い。
・神奈川県で宿泊する割合が高い(東京都に次ぐ2位)。

こうした特徴や傾向は、東南アジア各国からの訪日外国人のニーズをとらえるうえで参考になるでしょう。
実際にどのような誘致施策が行われているか、JNTOが実施している事例を一部紹介します。

●タイ市場において旅行のピークシーズンの一つである10月の訪日旅行を促進するため広告宣伝を実施。Facebookやウェブサイトを通じて広く発信。
●シンガポールに向け、会員制訪日コミュニティーサイトで、日本の観光地の名前を当てるキャンペーンを実施。リピーター率が高いシンガポール人の知日ぶりがうかがえた。 ●ベトナムの人気歌手をキービジュアルに用いた広告をウェブや SNS を通じて展開。
●近年インドネシアで増加傾向にある個人旅行者(FIT)をターゲットに、現地の人気旅行雑誌と人気ブロガーを東北6県に招請して小冊子を作成、ブロガーによるInstagramでの情報発信やビデオ制作も行い、東北地方の魅力を発信。
●インドでFacebookを活用したクイズコンテスト形式の消費者向けプロモーションを実施。

上記の通り、東南アジアはWEBやSNSの利用率も高く、日本への誘客に有効なツールといえるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・東南アジア各国で、訪問地や旅行方法、消費などで、国別の特徴や傾向がみられる。
・ソーシャルメディアなどを活用した情報発信で誘致をはかっている。

<参考資料>
観光庁 宿泊旅行統計調査(平成29年9月・第2次速報、10月・第1次速報)
訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期 訪日外国人の宿泊施設利用動向

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