ICT×教育

児童・生徒の安全なICT利用のために――情報モラル教育の取り組み

ICT利活用教育の前提となるリテラシーやモラル

教育の情報化が進められていますが、その前提として児童・生徒がリテラシーを身につけていることが不可欠です。学習でICTを活用するのはもちろんですが、そもそも学校に限らず日常でもICT機器と触れ合うことは避けられないいま、ツール(道具)であるタブレットなどの扱い方はもちろんのこと、トラブルや事故を予防する使用ルールを知っていることは必須です。

特に大切なのが情報モラルです。現代の子どもたちは、デジタルネイティブ、スマホネイティブなどと呼ばれますが、最初からそのモラルを身につけているわけではありません。初等教育においては、マナーやエチケット、リスクなどの教育が重要になるでしょう。学校教育には、「ICT利活用教育」だけでなく、リテラシーやモラルも求められているということです。学校の児童・生徒の用途から逸脱しないような適切な枠組みも必要ですが、正しくICTを利用できるモラルの教育が大切になってきます。

国では、この点についてどのような指針を出しているでしょうか。
文部科学省は「教育の情報化ビジョン」の中で、教育の情報化について、
① 情報教育(子どもたちの情報活用能力の育成)
② 教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、分かりやすく深まる授業の実現等)
③ 校務の情報化(教職員が情報通信技術を活用した情報共有によりきめ細かな指導を行うことや、校務の負担軽減等)
の 3 つの側面を通して教育の質の向上を目指すとしています。そして、児童・生徒の情報リテラシー/モラルに関わる①で重要となる観点として、「情報社会に参画する態度」(社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度)を挙げています。

総務省は、ICT利活用を促進する政策に「教育情報化の推進」を設け、項目の一つに「ICTメディアリテラシーの育成」を挙げています。その中で、小学校5、6年レベルで優先的に身につけるべき能力として「ICTメディアの特性を理解する能力」「コミュニケーションする相手を尊重する能力」「情報の権利(著作権・肖像権)を保護する能力」など11の学習項目を提示しています。

ICTリテラシー/モラルにもさまざまな点がありますが、重要なポイントとして、ツールやインターネットなどの理解、セキュリティー認識、そして、リアル社会と同様の倫理やコミュニケーションの問題が挙げられるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・教育の情報化で、学習内容(「ICT利活用教育」)とともに、リテラシーやモラル(「ICT教育」)が重要になる。
・文部科学省や総務省が、子どもたちが身につけるリテラシーやモラルについて指針を提示している。

<参考資料>
文部科学省 教育の情報化ビジョン
総務省 教育情報化の推進 ICTメディアリテラシーの育成

コミュニケーション教育は社会生活全体に関わる大きな課題

ICT化は教育分野だけでなく、私たちの生活全体に浸透しています。例えば、スマートフォンなどのデジタルデバイスや、LINEなどのコミュニケーションツールは、日常的に利用されています。ICTのリテラシー/モラルを身につけることは、学校の枠組みを超えて社会生活全体に関わる課題です。

前述の「教育の情報化ビジョン」や「教育情報化の推進」、そして、総務省「情報通信白書」の最新となる平成29年版でも、この点について触れ、いずれも以下の点に言及しています。
・携帯電話などICT端末が普及し、子どもたちの生活におけるインターネットやICTメディアの位置づけが大きくなっている
・これに関連した誹謗中傷やいじめ、犯罪や違法・有害情報などの問題が発生している
・情報化が急速に進む社会で情報セキュリティーの確保の重要性が高まっている

子どもたちのトラブルとして、具体的にはインターネットやICTメディアなどへの依存や違法行為、LINEなどコミュニケーションツールを使ったいじめなどが懸念されます。発達途上の子どもたちの生活に密接に関わる問題は、まず防がれなければなりません。こうしたトラブル防止の対応が、学校でも進んでいます。

文部科学省は、「学力向上ICT活用指導ハンドブック」の中で、「情報モラル教育に「『待った』はない!」として取り組みを促し、教育の実践事例を提示しています。また、教員向けに、教育委員会や学校の取り組みを実践事例集としてまとめ、公開しています。

総務省は、「インターネットトラブル事例集」を公開し毎年更新しています。実例とともに予防法と対処法を示す内容で、学校の授業での活用も想定されています。例えばその平成29年度版では、「スマホの過度な使用による日常生活への支障」「無料通話アプリなどでの悪口や仲間外れ」「なりすまし投稿による誹謗中傷」などの事例が紹介されています。

特に、いじめに発展する可能性のあるコミュニケーションの問題は、喫緊の課題と言えるでしょう。サービスを提供する企業も対応しています。例えば、普及しているコミュニケーションツールの一つであるLINEは、啓発教育を目的にワークショップを実施し、授業で使える教材の配布も行っています。
東京都教育委員会はLINEとの共同研究プロジェクト「SNS東京ルール」を定め、取り組んでいます。

<ココまでのまとめ>
・ICTリテラシー/モラルは、学校にとどまらず社会生活で必要。
・コミュニケーションの問題は、喫緊の課題。LINEは啓発教育や教材配布に取り組んでいる。

<参考資料>
平成29年版情報通信白書 第5節 ICT利活用の推進 5 ICT人材の育成より
学力向上ICT活用指導ハンドブック
文部科学省 学校教育 – 情報モラル実践事例集
総務省 インターネットトラブル事例集ダウンロードページ
LINE 安心安全ガイド

著作権などの権利を周知――違法ダウンロードを避ける

インターネットの時代、誰でも多くの情報公開・取得できるいま、著作権を理解することも重要です。違法ダウンロードの防止や著作権保護の観点から、関連機関や企業でも実施されているICTのリテラシー/モラルの普及・啓発活動をみてみましょう。

・一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は、啓発・教育プログラムコンテンツやニュースを集めたポータルサイト「ケータイ・インターネットの歩き方」を設置しています。「著作権編」では、教材を通じてファイル共有ソフトや違法ダウンロードの問題について解説しています。

・NTTドコモは、「スマホ・ケータイ安全教室」を全国で実施。ダウンロードできる教材も用意しています。公開している「トラブル事例に学ぶ スマートフォン安心ガイド」では、「サイト・アプリのトラブル事例」の中で、著作権について解説し、違法アップロード/ダウンロードに注意するよう促しています。

・ヤフーとDeNAは「Yahoo!モバゲー」内に「マナー&セーフティー」のページを用意し、保護者に向け著作権侵害の回避について説明しています。ヤフーはまた、「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」で、学習教材を提供するなど、保護者や学校と共同でIT教育の推進に取り組んでいます。

・コンピュータセキュリティのカスペルスキーは、「セキュリティとモラルのガイドブック」を用意。その中で、著作権侵害について取り上げています。

こうした取り組みの多くは、情報モラルについて総合的にガイドし、子どもや教職員だけでなく保護者も対象にしています。子どもたちがICTのリテラシー/モラルを身につけるため、学校、家庭、地域社会の協力が大事になっています。

<ココまでのまとめ>
・ICTのリテラシー/モラルとして、著作権の認識やインターネットやICTメディアの理解も重要
・情報モラルの普及・啓発活動は、NTTドコモやヤフーなどの企業でも実施されている。

<参考資料>
ケータイ・インターネットの歩き方
NTTドコモ トラブル事例に学ぶ スマートフォン安心ガイド
Yahoo!モバゲー「マナー&セーフティー」
子どもたちのインターネット利用について考える研究会
カスペルスキー「セキュリティとモラルのガイドブック」

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