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訪日時の支出が高額。うかがえる「コト消費」志向――ヨーロッパ地域の訪日外国人の傾向

■訪日数全体に占める割合は低いが、1人当たりの旅行支出はどの国も高額――ヨーロッパ地域の訪日状況

前回までに、東アジア東南アジアの国々の訪日の状況や傾向についてみてきました。今回は欧州、ヨーロッパ地域(イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ロシアの6カ国)の訪日状況やその特徴をみてみましょう。

2018年1月に公表された観光庁の「訪日外国人消費動向調査」の最新版(平成29年10-12月期の速報値)によると、訪日外国人旅行者数749万人中、ヨーロッパは約28万人(構成比3.7%)。旅行消費額1兆1,400億円中、ヨーロッパは569億円(構成比5.0%)となっています。前回まで最新だった同調査の(平成29年7-9月期)のデータでも、訪日外国人旅行者数、旅行消費額ともヨーロッパの構成比はおおよそ同じです。

同じ10-12月期の調査でヨーロッパ6カ国の内訳をみてみると、訪日外国人旅行者数は、6カ国の中で最も多いイギリスが8.1万人で構成比1.1%。残りの国々は構成比1.0%未満(2~7万人)です。訪日外国人旅行消費額は、イギリスが179億円で構成比1.6%、フランスが139億円で構成比1.2%。残りの国々は構成比1.0%未満(40~100億円)です。

ヨーロッパは、訪日者数で全体に占める割合は小さいですが、訪日時の消費額の高さに注目する必要があるでしょう。1人当たりの旅行支出は6カ国すべてが平均(152,119円)以上です。7-9月期も、また2017年の年間でみても、同様に平均より高くなっています。最新の10-12月期では、ロシアとイギリスが、全国籍中、オーストラリア、中国に次ぐ高額です。

<ココまでのまとめ>
・ヨーロッパ地域からの訪日が全体に占める割合は、旅行者数で3.7%、旅行消費額で5.0%程度。
・1人当たりの旅行支出はヨーロッパ6カ国とも平均より高額。

<参考資料>
観光庁 【訪日外国人消費動向調査】平成29年年間値(速報)及び平成29年10-12月期の調査結果(速報)
観光庁 【訪日外国人消費動向調査】 平成29年7-9月期の調査結果(速報)

■モノ消費よりコト消費?買物より宿泊、飲食にお金をかける傾向

ヨーロッパは、前回までに取り上げたアジアより地理的に距離のある地域。東アジア地域や東南アジア地域の国々と比べると、初回訪日の割合は高めで、中でもスペインとイタリアは、全国籍でみて初回訪日の割合が最も高くなっています(スペイン:77.3%、イタリア:62.7%)。また、平均泊数は6カ国とも平均より長期間で、アジア地域と比べると、7日間以上の滞在の割合の高さが目立ちます。

日本政府観光局(JNTO)が公表している「市場動向トピックス」によれば、2017年内に6カ国とも多くの月で過去最高の訪日者数を達成し、イタリアとスペインを除く4カ国では、2017年内に単月最高を記録しています。2017年の年間訪日者数も過去最高になっており、訪日者数は伸びています。

消費については、前述した1人当たりの旅行支出の多さとともに、支出内容の傾向にも共通点がみられます。
6カ国とも、宿泊料金、飲食費、交通費の旅行支出に占める割合が平均より高く、買物代の割合は低くなっています。これは買物代の割合が高い中国をはじめとするアジア地域と対照的です。10-12月期の調査では、特に宿泊料金や飲食費でイタリアやイギリスが、交通費でスペインやフランスが、それぞれ全国籍中でも割合の高さが目立ちます。今後のインバウンドの鍵になると言われる「体験型旅行」「コト消費」の志向がうかがえると言えるでしょう。訪日旅行の満足度もアジア地域に比べて高く、今後の訪日者数や訪日時消費の拡大が期待されます。

観光庁「宿泊旅行統計調査」の最新版で訪問地をみると、京都や広島での宿泊が目立ちます。6カ国とも京都は東京に次ぐ宿泊地で割合も高く、広島では宿泊者の13%をヨーロッパが占めています。また、石川、福井、岐阜など大都市圏外への訪問もみられます。

<ココまでのまとめ>
・ヨーロッパ地域は、地理的にアジアと比べ遠距離。初回訪日の割合が高めで、平均泊数は6カ国とも平均より長期間。
・宿泊料金、飲食費、交通費の旅行支出に占める割合が高く、「体験型旅行」「コト消費」の志向がうかがえる。

<参考資料>
観光庁 訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 平成 29 年 10-12 月期 報告書
日本政府観光局 市場動向トピックス
日本政府観光局 訪日外客数(2017 年 12 月および年間推計値)
宿泊旅行統計調査(平成29年10月・第2次速報、11月・第1次速報)

■伸び率の高いロシア、観光・レジャー目的の滞在が長いドイツ――国別の特徴と施策事例

各国別に特徴や傾向を、これまで挙げてきた資料などをもとにみていきましょう。

<イギリス(英国)>
・ヨーロッパ6カ国で最も訪日数が多い。2017年には年間過去最高の30万人を突破。
・1人当たりの旅行支出で、宿泊費の占める割合が全国籍中でみて高く(44%)、金額も最多(98,103円)。
・1人当たりの旅行支出が、2017年間で、全国籍中中国、オーストラリアに次ぐ3位。また、前年比18.5%と最も伸びた。
・訪日旅行全体の満足度が全国籍でみて高く(ロシアに次ぐ2位)、再訪意向も高い(タイ、ベトナムに次ぐ3位)。

<ドイツ>
・観光・レジャー目的の滞在日数が長い(14日間以上が56.0%)。
・全国籍中で、インド、ベトナム、インドネシアに次いで業務目的が多い。

<フランス>
・1人当たりの旅行支出で、交通費の占める割合が全国籍中でみて高く(19%)、金額もオーストラリアに次ぐ2位(39,900円)。
・「有償での住宅宿泊(民泊)」利用率が、全目的で全国籍中最も高く(28.6%)、観光・レジャー目的ではシンガポールに次いで高い(35.9%)。

<イタリア>
・初回訪日の割合が全国籍中でスペインに次いで2番目に高い。
・静岡で宿泊する割合が高い(東京、京都、大阪に次ぐ4位)。

<スペイン>
・初回訪日の割合が全国籍中で最も高い。
・ヨーロッパ6カ国の中で観光・レジャー目的の訪日の割合が最も高い(73.9%)。
・岐阜で宿泊する割合が高い(東京、京都に次ぐ3位)。

<ロシア>
・1人当たりの旅行支出で、娯楽費の占める割合が全国籍中でみて最も高く(5%)、金額も最多(11,453円)。
・平均泊数がヨーロッパ6カ国中最多で全国籍中4位(14.1泊)。
・伸び率の高さが全国籍中で目立つ。
-訪日外国人旅行者数:前年同月比43.7%増。2017年内に2度訪日数の単月過去最高を達成。
-1人当たり旅行支出:前年同月比39.8%増。

こうした状況や傾向は、ヨーロッパ各国からの訪日外国人のニーズを知る上で役に立つでしょう。インバウンドにおいてモノ消費からコト消費への変化が重要視される中、ヨーロッパからの訪日促進も期待されます。実際にどのような誘致活動が行われているか、JNTOは下記のような事例を紹介しています。体験型旅行の訴求や、長い検討期間を見据えた取り組みがみられるのが特長といえます。

●イギリスのフリージャーナリストを招き、ラグビーワールドカップ2019日本大会の試合会場がある九州のプレストリップを実施。九州の自然、歴史、食、エンターテインメント施設も視察し、体験型のアクティビティーも含まれ、満足度の高いプレストリップとなった。
●秋口に向こう1年の旅行商品が発表され商品が揃うドイツ市場に向け、10月に大手オンライン・トラベル・エージェント(OTA)や旅行会社と共同広告を展開。OTA とは個人旅行者 を、旅行会社とは主に団体をターゲットに、訪日旅行商品をPR。
●Instagramのロシア語アカウントで消費者向けに旅行で使用できるクーポンを贈るキャンペーンを実施。応募者数は9,000件以上に上り、10万人ものフォロワーを獲得し今後の情報発信基盤に。
●イタリアのジャーナリストとカメラマンを瀬戸内・四国地方に招請。各社の記事掲載などを通じて、多くの一般消費者に地方の魅力を訴求。
●スペインのハネムーナー向けに特設ウェブページを開設。東京・箱根・京都・沖縄を舞台に撮影したPR映像を公開、ウエディング誌オンライン媒体ではバナーを設置して映像に誘導。
<ココまでのまとめ>
・イギリスはヨーロッパの中で最も訪日数が多く、1人当たりの旅行支出が2017年間で3位。ロシアは伸び率が顕著など、各国で特徴や傾向がみられる。

<参考資料>
訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】平成29年7-9月期 訪日外国人の宿泊施設利用動向

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