ICT×教育

無線LAN整備率は29.6%。学校のICT環境整備の実態

タブレット端末など機器導入は進んだものの、整備状況に地域差

2017年3月に、2020年度から実施される小・中学校の新学習指導要領が公示され、高等学校についても現在改訂に向けた作業が進められています。もう2年と少し後に実施を控えた現在、ICT環境整備はどのような状況なのでしょうか。

文部科学省は、2017年12月末に「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」の平成28年度の速報値を公表し、併せて、平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について取りまとめて発表しています。毎年度行っているこの実態調査で環境整備状況を伝えることに加え、新学習指導要領の実施を見据えた次年度以降の学校のICT環境整備について方針を明示して、ICT環境整備の加速化を促しています。

この実態調査をみると、ICT環境整備の進捗状況として、以下のような数値が挙がっています。
・教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数:5.9人[前年度(以下同)6.2人]
・普通教室の電子黒板整備率:24.4%[21.9%]
・超高速インターネット接続率及び無線LAN整備率
100Mbps以上:48.3%/[38.4%]/30Mbps以上:87.3%[84.2%]
普通教室の無線LAN整備率:29.6%[26.1%]/普通教室の校内LAN整備率:88.9%[87.7%]
・教員の校務用コンピュータ整備率:118.0%[116.1%]

都道府県別の整備状況も公表されています。教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数では、佐賀県がトップで1.9人/台。神奈川県が最低で8.0人/台。普通教室の無線LAN整備率は静岡県がトップで63.1%。富山県が最低で5.7%。整備を底上げするために、同調査では平成26年度からは市区町村単位の実態調査結果も公表されています。

今回発表された調査結果から、文部科学省は、地方公共団体間のICT環境整備状況に格差があり、児童生徒の学習環境の格差につながるおそれがあると指摘しています。

<ココまでのまとめ>
・文部科学省がICT環境整備の実施状況を発表。これによればタブレット型コンピュータなど機器導入が進んだ。
・ICT環境整備状況には地域格差がみられ、学習環境の格差につながることが懸念される。

<参考資料>
文部科学省 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(平成28年度)〔速報値〕及び平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について(通知)
文部科学省 平成28年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果

無線LAN整備率は29.6%。目標水準にまだ遠い環境整備

学校のICT環境整備については、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26~29年度)」に基づいて進められてきました。同計画は、平成25年6月に閣議決定された第2期教育振興基本計画で設定された目標水準に基づいています。

第2期教育振興基本計画で目標とされていた平成29年度までの水準の内容は、
・教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数 3.6人
・電子黒板・実物投影機の整備(1学級当たり1台)
・超高速インターネット接続率及び無線LAN整備率 100%
・校務用コンピュータ 教員1人1台
などでした。

今回公表された実態調査の結果では、こうした目標と対になる数字です。ICT環境整備は進んでいるものの、目標からすると整備率はまだまだ低いと言えるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・学校のICT環境整備は、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」に基づいて進められてきた。
・4か年計画が終わる2017年度の整備状況は目標からするとまだまだ低い。

<参考資料>
文部科学省 教育のIT化に向けた環境整備4か年計画

「コンピュータは3クラスに1台」――文科省が提示する最低限の考え方

今回通知された平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針は、新学習指導要領の実施を見据え、具体的に方針を示しています。実態調査の状況を踏まえて、より現実的な方針が改めて提示されたと言えるでしょう。

例えば、ICT環境整備の検討に当たっては、「ICTを活用した学習活動を踏まえ優先的に整備すべきICT機器等と機能について具体的に整理を行う」「限られた予算を効果的・効率的に活用する観点から検討を行う」といったことが必要と説いています。
また、最低限必要とされ、かつ、優先的に整備すべきICT機器について、設置や機能といった点に踏み込んで、考え方を提示しています。具体的には、「大型提示装置」「実物投影装置」「学習者用コンピュータ(児童生徒用)」「指導者用コンピュータ(教員用)」「充電保管庫」「ネットワーク」「いわゆる「学習用ツール」」「学習者用サーバ」の8項目を挙げて、標準的な考え方や必須要件などを整理して示しています。

<学習者用コンピュータ(児童生徒用)>
最終的には「1人1台専用」が望ましいが,当面,全国的な学習者用コンピュータの配備状況等も踏まえ、各クラスで1日1コマ分程度を目安とした学習者用コンピュータの活用が保障されるよう、3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピュータの配置を想定することが適当である。

<ネットワーク>
・校内LAN(有線及び無線)は,学級で児童生徒全員が1人1台の学習者用コンピュータを使い調べ学習等のインターネット検索をしても安定的に稼働する環境を確保する。
・「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の検討を踏まえたセキュリティ対策を講じる。

<学習者用サーバ>
本来は,教育委員会による一元管理(インターネット回線を使ったクラウド(パブリッククラウド)の活用を含む)を行うことが望ましいが、学校の通信回線の帯域幅の課題及び授業における安定的な稼働等の観点から、当面、各学校1台分のサーバの設置を前提とする。

ほか、「大型提示装置」は、学習者用コンピュータや指導者用コンピュータと有線や無線で接続させることを前提に、大きく映す提示機能を必須とした上で必要な機能を検討するよう促すなど、詳しい機能に言及されています。また、上記の「ネットワーク」に限らず、2017年10月に策定・公表された「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策が求められています。

4か年計画を経て、新学習指導要領の実施開始が迫る現在。児童生徒の学習環境の差が教育に影響しないよう、ICT環境が整備されるにあたって早急な対応が求められます。

<ココまでのまとめ>
・平成30年度以降の整備方針では、設置や機能といった点に踏み込んで、標準的な考え方などを明示している。
・新学習指導要領実施を間近に控え、児童生徒の学習環境の差が教育に影響することなくICT環境が整備されることが求められる。

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