ICT×教育

正式な採用が待たれるデジタル教科書――最適な情報端末はノートPC?タブレット?

デジタル教科書の正式採用を盛り込んだ学校教育法等改正案、閣議決定

2018年2月23日、学校教育法等改正案が閣議決定しました。この改正案は、ごく簡単に言うと、「デジタル教科書の使用を認める」という内容。教育の情報化に対応し、2020年度から実施される新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や、障害などにより教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援のため、必要に応じて「デジタル教科書」を通常の紙の教科書に代えて使用することができる、としています。

現在、小学校、中学校、高等学校などの授業では、紙の教科書を使用しなければならないとされており、デジタル教科書などのデジタル教材は、それとは別の副教材に位置づけられています。同改正案は、「教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備」などを含む著作権法の改正案などとともに、現在進んでいる第196回国会に提出され、成立が目指されています。学校教育法等改正案の方は2019年4月1日からの施行が想定されており、これが実現し、教育の情報化が進むことが期待されます。

デジタル教科書は、「デジタル機器や情報端末向けの教材のうち、既存の教科書の内容と、それを閲覧するためのソフトウェアに加え、編集、移動、追加、削除などの基本機能を備えるもの」と定義され、音声の再生、動画、拡大等の機能に加えて、インターネットの活用や双方向性のある授業、ネットワークを介した共有、理解度に応じた演習や家庭・地域における自学自習等に資すると考えられています。

これを使用するには、もちろんそれを閲覧する情報端末とそれを使用できる環境が求められます。また、デジタル教科書に限らず、プログラミングの必修化など2020年の新学習指導要領への切り替えにあたって、情報端末が様々な学習の状況で利用されることを見逃せません。情報端末と言っても、デバイスの種類や機能などさまざまなものがありますが、どのようなものが望ましいのでしょう。

<ココまでのまとめ>
・「デジタル教科書の使用を認める」内容の学校教育法等改正案が閣議決定し、国会に提出された。
・デジタル教科書だけでなく、今後情報端末は様々な学習で利用されることが予測される。

<参考資料>
文部科学省 学校教育法等の一部を改正する法律案の概要
文部科学省 デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に係る調査研究事業

新学習指導要領を満たす教育用コンピュータの要件とは?

新学習指導要領に向けて整備するICT環境については、文部科学省が目標や方針を提示しています。
具体的には、
・児童生徒が使うPC
・無線LANなどネットワーク機器
・電子黒板・実物投影機などの大型提示装置
・校務用PC
などが示されています。

児童生徒が使うPC(教育用コンピュータ)は、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26~29年度)」の中で、コンピュータ教室のPCと、「設置場所を限定しない可動式コンピュータ」と挙げられています。
児童生徒が普通教室の授業でデジタル教科書を閲覧することになるのは後者になり、「可動式」ということから、ノートPCやタブレットPCが考えられます。

また、学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議のもとに設置された「効果的なICT活用検討チーム」は、2017年3月に発表した「次期学習指導要領で求められる資質・能力等とICTの活用について」の中で、教育用コンピュータの役割として、大きく10の機能を挙げています。

(1) 個別のドリル学習
計算練習や漢字練習,単語練習などを、即座に採点されるようなシステムを用いて効率的に実施。
(2) 試行錯誤する
デジタル教材は多様なものを準備可能。児童生徒が自分で色々試してみて確かめる。
(3) 写真撮影する
観察の際に対象を撮影。
(4) 念入りに見る
画面を拡大する機能を利用して写真や画像資料の細部を念入りに見ることで、各学習者の気付きが根拠をもつ。
(5) 録音・録画と再視聴
ビデオ撮影する機能を利用して、英語の発音や詩の朗読などを自分で録音し、それを自分で聞いてふり返り、改善するような学習が可能になる。また、実験の様子を録画して、後から再視聴しながら現象を詳しく観察し直すことも可能。
(6) 調べる
インターネットを利用して調べることが容易になる。
(7) 分析する
数値の観測データを表に整理したりグラフ化して傾向を見つけたりするなど、調べ学習の後で情報を整理して分析できる。
(8) 考える
思考ツールのアプリケーションを用いて思考する
(9) 見せる
自分の考えを人に伝えるときに、プレゼンの資料などを作成して示しながら話すような学習を、各所で同時に進行できる。
(10) 共有・協働する
画面送信機能で、互いのアイデアを自分のものと組み合わせたり、編集して活用するなど。他者のアイデアに対する質問やアドバイスもスムーズに行える。

パソコンとネットワークがあれば実現できる内容もありますが、観察時の撮影や実験の録画などについても可動性が重要といえるでしょう。同資料では「教育用コンピュータ(タブレットPC)」と記載しています。

一方、 上記の環境整備4か年計画の後、2017年12月に公表された「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」では、児童生徒が使う「可動式コンピュータ」について、機能面における要件を以下のように示しています。

(1) ワープロソフトや表計算ソフト,プレゼンテーションソフトその他の教科等横断
的に活用できる学習用ソフトウェアが安定して動作する機能を有すること。
(2) 授業運営に支障がないように短時間で起動する機能を有すること。
(3) 安定した高速接続が可能な無線LANが利用できる機能を有すること。
(4) コンテンツの見やすさ,文字の判別のしやすさを踏まえた画面サイズを有すること。
(5) キーボードの「機能」を有すること。なお,小学校中学年以上では,いわゆるハードウェアキーボードを必須とすることが適当であること。
(6) 観察等の際に写真撮影ができるよう「カメラ機能」があることが望ましいこと。

タブレットPCの場合、(5)の内容を満たすには、外付けなどのハードウェアキーボードを用意する必要があるでしょう。

新学習指導要領で、プログラミング教育が必修化されることも、学校に導入する情報端末を選ぶにあたって重要な条件です。
同整備方針でも、新学習指導要領の実施等に向けたICT環境整備にあたって、特に新小学校学習指導要領で、「児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」の実施が明示されていることを特記しています。

<ココまでのまとめ>
・新学習指導要領に向けて整備するICT環境については、文部科学省が目標や方針を提示している。
・普通教室の授業でデジタル教科書を閲覧することになる「可動式コンピュータ」は、カメラ機能の利用などを考慮するとタブレットPCが有力とも考えられる。

<参考資料>
文部科学省 教育のIT化に向けた環境整備4か年計画
次期学習指導要領で求められる資質・能力等とICTの活用について
平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について

iPad、Surfaceなどが導入――教育用コンピュータの導入事例

学校で、教育用コンピュータとしてどのような情報端末を導入すべきか、実際の導入事例も参考になるでしょう。バッファローの無線LANネットワークを導入した事例からご紹介します。

<純心女子学園(長崎県):iPadを導入>
2021年の大学入試改革で導入が検討されているCBT方式(パソコンやタブレットを活用した試験方式)を踏まえ、生徒用タブレットの導入を決定。
同学園は中学校・高校・大学・幼稚園を運営。その中学校からタブレットを活用した授業を開始し、授業のスピード化と質の向上を図った。
高校生の希望者にも貸し出し、自主学習に活用。高校生のグループ学習用にiPad Proも導入した。

<菊川市教育委員会(静岡県):iPadを導入>
2015年から4年計画で、市立小・中学校に生徒用タブレットを配布。2018年には、すべての市立小・中学校への無線LAN導入が完了し、本格的なタブレット授業を開始する予定。
iPadは充電しながら保管が可能な専用ラックに収納し、必要に応じて各クラスへ持ち出して利用している。

<新宿区教育委員会(東京都):Surface Pro 4を導入>
統括する区立の小・中・特別支援学校全40校のさらなるICT環境の充実を図るため、教育用の無線LANネットワークを強化し、最新のICT機器への更新を実施。すべての教室で1人1台のタブレットPCを使った授業が可能になった。

純心女子学園では、授業支援ソフトやデジタル教科書、プレゼン・表計算アプリを授業に活用し、授業や学習が効率化し、内容の濃い授業を行えるようになったといいます。
また、新宿区の落合第四小学校にはWindowsのタブレットPCであるSurface Pro 4が導入され、ペン入力、キーボードを使った入力に対応しており、前述の整備方針で小学校で必須とされたハードウェアキーボードも備えた形になっています。
このようにICT環境は各学校に合わせて整備されていますが、学校ごとに目標や課題が異なることはあっても、児童生徒の教育の質に格差が生まれてはいけません。新学習指導要領の実施を控え、デジタル教科書の利用を見越した環境整備が求められるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・教育用コンピュータが実際に導入された事例をみてみると、iPadやSurfaceが導入されている。
・新学習指導要領の実施を控え、教育の質に格差が生まれないような環境整備が求められる。

<参考資料>
すべての教科でタブレットを活用した授業を実施できるように、運動場を含めたすべての施設に無線LAN環境を構築。授業の効率化や質の向上、教材のペーパーレス化に貢献
授業計画にICT活用授業実施チェックを盛り込む「菊川方式」。すべての市立小・中学校に無線LANを導入し、学校・教員のICT活用による授業改善をサポート
『新宿版教室のICT化』の進化発展を目指し、区立小・中・特別支援学校全40校にWi-FiタブレットPCを導入。41台のWi-Fi同時接続を実現し、ICTを活用した授業が特別なものではなく「日常」のものに。

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