ICT×教育

急がれる教師の働き方改革実現。期待されるICTの貢献

深刻な教師の多忙化。文科省が緊急対策打ち出し

昨今よく話題にのぼる「働き方改革」。さまざまな業種で問題になっている労働力不足や長時間労働などを背景に、政府が「長時間労働の是正」や「労働生産性向上」、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などの方向性を打ち出し、これを推進しているのはご存じでしょう。
教職員が勤務する学校でも働き方改革が進められています。教師の多忙化や残業の多さは特に問題視されており、学習指導以外でも、部活動や学校行事の対応の問題が顕在化してしばしば注目されます。労働環境の視点からみた教師の負担軽減は喫緊の課題です。

こうした状況を受け、文部科学省は、2017年12月に「学校における働き方改革に関する緊急対策」を公表しました。これは、中央教育審議会が、学校・教師が担う業務を明確化し、役割分担と業務の適正化などの観点から具体的な方策を示した、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」を受けたもので、文部科学省が中心的に実施していく内容がまとめられています。

この中では、学校・教師の業務を適正化するための取り組みとして、部活動、授業準備、学習評価や成績処理、支援が必要な児童生徒・家庭への対応など多岐にわたる範囲で、学校・教師の業務について、改善内容が示されています。
例えば部活動については、ガイドラインの提示や動指導員や外部人材の参画などを促しており、全体を通じて、特に専門スタッフ、サポートスタッフ等による人的支援促進が多く挙げられています。また、その中でICT活用も有効としており、求められるソリューションのアイデアが提示されています。
ICTは、学校の働き方改革にどのように貢献できるでしょうか。

<ココまでのまとめ>
・教師の長時間労働はしばしば話題にのぼっており、学校における働き方改革は喫緊の課題。
・文部科学省は「学校における働き方改革に関する緊急対策」で、人的支援やICT活用による改善を提示している。

<参考資料>
文部科学省 学校における働き方改革に関する緊急対策

電子化などによる効率化や円滑化で業務・管理を改善――校務支援システムのメリット

「学校における働き方改革に関する緊急対策」では、ICT利用が関係する改善として、

●授業準備における教室用デジタル教材、教師用指導書、学習指導案例、ワークシートなど授業準備に役立つ資料を含めた新学習指導要領に対応した教材の開発・配布
●勤務時間管理におけるICT活用やタイムカード利用
●保護者や外部からの問合せ等に備えた対応のための、メールによる連絡対応等の体制整備

が挙げられており、働き方改革の実現に向けた環境整備のために、平成30年度予算案で「都道府県単位での統合型校務支援システムの実証研究費」として3億円を計上していることに触れています。

学校におけるICTの利活用による業務改善については、文部科学省が教育の情報化について方針を提示した「教育の情報化ビジョン」でも、「情報教育」「教科指導における情報通信技術の活用」とともに「校務の情報化」を3本柱の一つに設定して推進されてきました。

「校務の情報化」は、「学籍・出欠・成績等の管理、教員間の指導案・デジタル教材・学習履歴等の共有、学校ウェブサイトやメール等による家庭・地域との情報共有等に資するもの」と位置づけられています。情報通信技術を活用したきめ細かな指導の実現とともに校務負担の軽減が目標とされ、そのために「校務支援システム」の導入が促されています。「校務支援システム」は、いずれも校内に整備した有線・無線LANネットワークを利用して、校務文書機能やグループウェアなど教職員間の情報共有機能、服務についての申請・決裁機能などを持ち、クラウド型(サービス利用型)、共同利用型、個別利用型(オンプレミス型)といった提供形態があります。

文部科学省は「教育の情報化の推進」サイトで「校務支援システム導入・運用の手引き」を公開し、業務負担軽減や教育の質的向上などシステム導入メリットとともに、実際の手順を解説しています。

具体的なシステム導入メリットとして、以下が挙げられています。
●通知表や指導要録を作成する際、他の校務文書の情報を二次利用(例:自動的に氏名・住所・出席情報等を転記)できるため、作成事務を軽減できる。
●グループウェアは、校内のみならず、教育委員会と学校間、学校と学校間の情報共有に利用することができる。例えば、指導計画や指導案等について、学校内又は同一地域の学校間で共有したり、会議や研修に関する情報を関係者で共有したりすることができるなど、教職員間の情報の伝達やコミュニケーションの促進を図ることができる。
●通知表や指導要録は、管理職の査閲が必要であり、査閲が終わらないと原紙に転記できない場合があるが、校務支援システムの成績や所見の一覧表を出力する機能を利用することで転記にかかる手間や転記のミスを軽減することが可能。

このような、電子化による「文書作成や手続き・管理の効率化」「情報伝達、コミュニケーションの円滑化」は、業務の改善や効率化に役立つでしょう。

<ココまでのまとめ>
・校務の情報化により、情報通信技術を活用したきめ細かな指導の実現と校務負担の軽減が目標とされている。
・普及が促されている校務支援システムは、文書作成事務の軽減や情報伝達、コミュニケーションの円滑化で教師の業務改善に貢献する。

<参考資料>
文部科学省 教育の情報化ビジョン
校務支援システム導入・運用の手引き

大阪市や北海道で業務効率化を実現。新たな取り組みも

校務支援システムを既に導入した学校では、実際に校務がどう変わったでしょう。

中央教育審議会の「学校における働き方改革特別部会」配布された「統合型校務支援システムによる業務の効率化について」という資料では、2つの成功事例が紹介されています。

<大阪市教育委員会>
大阪市でクラウドシステムを構築。会議時間を短縮し学校ホームページ運営を手軽にするなどして、平成26年度の成果として、担任教師の時間を年間224.1時間(日換算で56分)効率化。

<北海道教育庁>
道市町村でクラウドシステムを共同利用。小規模の自治体でも比較的安価で、また短期間で導入でき、校務を標準化するなどして負担を軽減。平成27年のモデル実践で、年間平均116.9時間(日換算で29分)軽減し、時間外勤務を減少できた。

前述した「校務支援システム導入・運用の手引き」では、クラウド以外のシステムの導入も紹介されています。
兵庫県姫路市では、市のセンターサーバーにファイルサーバーや校務支援システムを置いてデータ管理し、導入4カ月で、児童生徒1人あたりの通知表作成時間を18.3分軽減。転記ミスやリンクミスがなくなったため、質の向上につながったとの意見も寄せられています。

最近の新たな取り組みとして、佐賀県多久市では、市と教育委員会、ソフトバンク コマース&サービス、日本マイクロソフトの4者で「児童生徒の学び方と教職員の働き方改革プロジェクト」を開始。校務・教務クラウドシステムを活用して、文書のデジタル化・情報共有による印刷文書とそのコストの削減、授業コンテンツの共有、テレワークの運用開始などによって校務の効率化と時間外労働の縮減を図っています。
日本マイクロソフトは、2018年4月から、熊本県熊本市ともクラウドソリューションを活用した働き方改革のプロジェクトを開始。こちらでは、市職員と市立小中高等学校教職員の働き方改革を対象としており、Microsoft 365 Education の導入によって、教職員の長時間労働を軽減し、児童や生徒とふれあう時間を増やすことも目指しているといいます。

こうしたICT活用によって、学校・教師の働き方改革の実現、ひいては負担軽減が実現することが期待されます。

<ココまでのまとめ>
・大阪市教育委員会や北海道教育庁はクラウドシステムで、姫路市は市でネットワークを構築して校務支援システムを運用し、業務の効率化を実現した。
・多久市や熊本市は、日本マイクロソフトらと、クラウドソリューションを活かして教職員の働き方改革プロジェクトを推進している。

<参考資料>
統合型校務支援システムによる業務の効率化について
多久市、ソフトバンク コマース&サービス、日本マイクロソフト、「児童生徒の学び方と教職員の働き方改革プロジェクト」を開始
熊本市と日本マイクロソフト、デジタルトランスフォーメーションによる働き方改革推進で連携

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