ICT×観光

公衆無線LANがたくさんあって認証が面倒?――サービスを相互接続する取り組み「Wi-Cert」

■全国各地、それぞれの名称で展開される公衆無線LANサービス

来訪者の利便性向上や災害時の通信手段確保などを目的に環境整備が進んでいる公衆無線LAN(公衆Wi-Fi)。Wi-Fiスポットも増えてきていますが、その整備にあたっては、自治体など公共団体が主導したり、民間企業が主導したりとさまざまで、全国各地に、それぞれの名称でいくつもの公衆無線LANサービスが展開されています。

例えば、熊本県は「くまもとフリーWi-Fi」の名称で、県内の主な交通拠点や公共施設などで、県と各施設が連携・協力してWi-Fi環境を整備し、各施設が広く利用者に対してWi-Fiサービスを提供できるよう取り組んでいます。民間施設に対しても、補助金を交付してくまもとフリーWi-Fiの提供を呼びかけています。

このように、公衆無線LANサービスは各地で提供されていますが、各エリアでそれぞれの主体によって環境が整備されることで、問題などは起こらないのでしょうか?

公衆無線LANについては、総務省が、セキュリティーを考慮して不特定多数の人が使うサービスでは認証を行うことを手引きとして定め、認証で利用者を特定することによって、不正利用の防止を促しています。

しかし、各サービスごとに認証が必要となるため、移動する利用者は場所を変えるたび認証の手続きが必要で、手間に感じる場合もあるでしょう。スマホを利用していて、検出されたSSIDのパスワード入力や認証画面でのメールアドレス入力が必要になり、パスワードがわからず利用できなかったり、そもそも入力を面倒に感じたり、ということを経験することが多くなって、特に外国人観光客・インバウンド需要を目的としてWi-Fiを導入することもあり、認証がわかりづらいということも課題に挙がるようになってきました。

この問題を解消するために、それぞれの公衆無線LANサービスを相互接続できるようにしようという動きがあります。取り組んでいるのは、一般社団法人 公衆無線LAN認証管理機構(英文名:Wireless LAN Certification Organization。以下、Wi-Cert(ワイサート))。全国各地の公衆無線LANサービスについて、事業者の垣根を越えた簡素で一元化された利用方法を実現すべく活動しています。

<ココまでのまとめ>
・公衆無線LANの整備は、さまざまな主体がそれぞれ行っており、各サービスで認証が必要になるため利用者が不便になることが考えられる。
・Wi-Certは、全国各地の公衆無線LANサービスについて、簡素で一元化された利用方法を実現すべく活動している。

<参考資料>
外国人観光客誘致で整備してきた公衆無線LANサービスを 公共施設や仮設住宅、集会所へ展開。被災者の支援や復興支援に役立つ通信インフラを提供
公衆Wi-Fiは危険?設置時に覚えておくべきセキュリティー対策とは?

■全国のWi-Fiスポットに一度の登録でサインインできる仕組みを構築

Wi-Certは、訪日外国人からの「日本のWi-Fiサービスは使い難い」という声がもとになって設立されました。2016年2月に総務省が「訪日外国人に対する無料公衆無線LANサービスの利用開始手続きの簡素化・一元化に係る取組み方針」を発表し、実証実験を経て2016年9月に設立されています。
会員企業には、KDDI、ソフトバンク、ワイヤ・アンド・ワイヤレス、バッファロー、日本ケーブルテレビ連盟などの事業者が名を連ねており、訪日外国人が公衆無線LANサービスを必要な時にどこでも利用できる環境の実現が目指され、事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化により、全国のWi-Fiスポットに一度の登録でサインインできる仕組みを構築しようとしています。

Wi-Fiネットワークの相互連携の仕組みとして、Wi-Cert では、各Wi-Fiネットワークの認証手続きをアプリで行い、利用者特定のための認証手続きをアプリインストール時に済ませることで、利用者は複数の事業者のサービスでそれぞれ認証することなく、サービスをまたがって通信できるのです。

Wi-Cert が目指すイメージ(http://www.wlan-authmng.or.jp/?page_id=16より)

<ココまでのまとめ>
・Wi-Certは、全国のWi-Fiスポットに一度の登録でサインインできる仕組みの構築を目指している。
・Wi-Fiネットワークの相互連携には「Wi-Cert Web-API方式」を採用。各Wi-Fiネットワークの相互接続をアプリで行う。

<参考資料>
公共公衆無線LANにおける利用開始手続き簡素化・一元化の取組み

■愛媛県、長野県、愛知県などで運用開始。期待される連携エリア拡大

実際にどのような取り組みが実施されているのか、みてみましょう。

まず、Wi-Cert Web-API対応による認証連携を進めている会員企業の取り組みが挙げられます。例えば、ワイヤ・アンド・ワイヤレスは、同社のアプリ「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」にWi-Cert Web-APIを実装し、同じくWi-Cert Web-API対応する自治体エリアのWi-Fiネットワークとの相互利用を可能にしています。

Wi-Certとしては、現在までに、愛媛県の「えひめFreeWi-Fi」、長野県の「Hakuba Valley Wi-Fi」、愛知県の「Aichi Free Wi-Fi」「NAGOYA Free Wi-Fi」などにおいて、Wi-Cert Web-APIによる利用が開始されており、2018年1月には沖縄県の「Be.Okinawa Free Wi-Fi」でWi-Cert Web-APIによる認証連携のフィールド実証が開始されています。

Wi-Fi機器側の対応も進められています。岐阜県のフリーWi-Fiサービスで行われているWi-Cert Web-APIの試験提供では、バッファローの「FREESPOT導入キット」でサービスが構築されており、Wi-Cert Web-API方式対応の商用化に向けた試験と位置づけられています。バッファローは2018年夏発売予定の法人様向け公衆無線LAN導入キット「FS-M1266」でWeb-APIへの対応も予定しています。

こうした取り組みが進むことで、連携エリアが拡大して複数事業者の運用するネットワークが認証連携し、簡単で一元化された利用方法が実現することが期待されます。

<ココまでのまとめ>
・愛媛県、長野県、愛知県の公衆無線LANサービスで、Wi-Cert Web-APIによる利用が開始されている。
・今後、連携エリアが拡大し、利用者の利便性が向上することが期待される。

<参考資料>
Wi-Cert 会員各社 公衆無線LANサービスへの取組みご紹介
総務省「公衆無線LAN環境整備支援事業」の無線LAN機器要件に適合した法人様向け公衆無線LAN導入キットを今夏発売

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