ICT×観光

セキュリティーに配慮したサービスの普及を――総務省「公衆無線LANセキュリティ分科会」が促す公衆Wi-Fiの今後

■公衆Wi-Fiは、観光・防災など街づくりに不可欠な社会基盤

観光や防災の観点から普及が進んでいる公衆Wi-Fiですが、提供されているサービスの中にはセキュリティー対策が十分でないものもあり、これを踏み台にした攻撃や情報漏えいなどの問題が発生する懸念があります。
そうした現状を踏まえ、総務省が2017年11月から開催した「公衆無線LANセキュリティ分科会」は、公衆無線LAN(公衆Wi-Fi)のセキュリティー対策のあり方とセキュリティーに配慮した公衆Wi-Fiの普及策について検討を行い、2018年3月に報告書を公表しました。今後の公衆Wi-Fiの運用や導入にあたっても参考になるその内容をみてみましょう。

公衆Wi-Fiの利用者数は増加傾向にあり、2020年度末時点で約6,400 万人と予測されるといいます。

報告書はまず、公衆Wi-Fiの特徴や規格など概要のほか、これまでWi-Fiが普及してきた経緯を説明し、公衆Wi-Fiが観光・防災など、街づくりに不可欠な社会基盤へと進化したと位置づけています。

「近年、駅・空港・宿泊施設・飲食店等に導入する事例が多く見られ、自治体においても、地域活性化のツールとして公衆無線 LANの整備が進んでいる。また、訪日外国人旅行者にとっても、利用できる場所が十分あることが重要である。」(P.4)

では、公衆Wi-Fiは今後どのくらい普及が見込まれているのでしょうか。

今後について考える際、増加する訪日外国人旅行者の通信手段の確保を目的とした拡充は大きなポイントでしょう。報告書では、国を挙げて取り組む地方創生・観光立国化、2020 年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けて、公衆Wi-Fiは大きな役割を果たすことが期待されているとしています。また、近年、公衆Wi-Fiは防災インフラとしても注目されており、その環境整備について、2016年4月に発生した熊本地震を例に、設置・利用場所の増加と認知度の向上の必要性を指摘しています。

普及による利用者増加にともなってセキュリティー対策の重要性も増している状況で、セキュリティー上の脅威に対応していく指針が示されたのが今回の分科会の成果と言えるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・総務省「公衆無線LANセキュリティ分科会」が公衆Wi-Fiのセキュリティー対策と普及策について報告書を公表
・公衆Wi-Fiは街づくりに不可欠な社会基盤。観光面でも防災面でも大きな役割を果たすことが期待される。

<参考資料>
公衆無線 LAN セキュリティ分科会報告書

■セキュリティー対策で重要な認証と暗号化は「提供形態や利用シーンに応じて利用者が選択できる環境に」

それでは、公衆Wi-Fiのセキュリティー対策については、今どのような状況なのでしょう。報告書では、自治体、空港、宿泊施設における公衆Wi-Fiサービスの提供状況に関する調査結果から、以下のように評価しています。

●無線区間の暗号化:自治体44.9%、空港69.2%、宿泊施設28.8%が実施していない。
※ネットワーク分離機能やプライバシーセパレータ機能により、懸念される接続機器同士での他の通信の盗み見について、自治体79.2%、空港76.9%、宿泊施設74.3%の割合で一定の対策が行われている。
●Wi-Fi機器の設定:ID やパスワードを初期設定のまま使用している割合が一定程度ある。ファームウェアの更新は、自治体で31.3%、宿泊施設で51.5%が実施しておらず、十分に行われているとは言えない。
●認証(利用者確認):空港で61.5%、宿泊施設で90.9%が、利用登録、SMS 連携、SNS アカウント、メールなどによる認証で利用者確認をしていない。
※目視や監視カメラにより利用者の出入りを十分把握できる環境で提供している割合が高い。

そして、公衆Wi-Fiの普及を阻害する要因の一つに、利用者が抱えるセキュリティーに対する不安があり、利便性と安全性のバランスに配慮し、利用者・利用シーンに応じたセキュリティー対策が必要と指摘。対策には認証と暗号化が重要であるとして、例えば、利用者の認証方式について、Web 認証、SIM 認証、SNS 認証などを挙げつつ、アプリを介して接続する方法についても紹介しています。アプリはインストールする障壁はあるものの、無線区間の暗号化も実現できる長所があり、選択肢の一つとなると評しています。

<ココまでのまとめ>
・公衆Wi-Fiの普及を阻害する要因の一つに、利用者が抱えるセキュリティーに対する不安がある。
・利便性と安全性のバランスに配慮し、利用者・利用シーンに応じたセキュリティー対策が必要

■利用者・提供者への周知・啓発

報告書は、ここまで述べてきたような現状とセキュリティー対策のあり方をまとめ、今後のさらなる普及の方法に言及しています。

その中でも重要なのは利用者・提供者の意識向上でしょう。
総務省は、Wi-Fiの安全な利用のために「国民のための情報セキュリティサイト」<リンク http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/ >を設置し、「Wi-Fi 利用者向け簡易マニュアル」や「Wi-Fi 提供者向けセキュリティ対策の手引き」などで周知・啓発を実施していますが、これらについて、今回の報告書を踏まえたマニュアルや手引きの改定、青少年向けマニュアルの策定、サイトのコンテンツの充実を通じて、セキュリティーに関するさらなる周知・啓発を図ることが促されています。また、教育活動や関係事業者団体などを通じた情報発信など周知・啓発方法も例示しています。

ほかにも、セキュアな公衆Wi-Fiサービスが普及していくために、「公衆無線 LAN 版安全・安心マーク」制度を活用した、セキュアな公衆Wi-Fiサービスの展開にインセンティブを与える仕組みづくりや、利用者にとって利用しやすいアプリとの連携などの策を提示。こうした普及策は行動計画に落とし込まれ、進捗状況を同分科会で定期的に検証していくとされています。

利用者が増え、今後担う役割がさらに大きくなると期待される公衆Wi-Fi。日本が一丸となって、便利でセキュアな公衆Wi-Fi環境の実現に向かうことが求められています。

<ココまでのまとめ>
・公衆Wi-Fiの普及にあたり、利用者・提供者のセキュリティー意識向上を図ることが重要
・報告書で提示された普及策は、行動計画に落とし込まれ、同分科会で定期的に検証していく

関連記事

  1. ICT×観光

    米国はアジア4国に次ぐ訪日数。日本食が人気、日本文化にも関心――北米・豪州からの訪日

    ■欧州地域よりも訪日における構成比の高い北米豪。3国とも1人当たりの旅…

  2. ICT×観光

    訪日の多くを占める中国、韓国、台湾、香港。その規模と訪日時に表れる志向とは?

    ■訪日旅行者数、消費額とも全体の約8割を占める上位5位のうち、4国が東…

  3. ICT×観光

    スタッフの連絡手段、設備拡充、業務の効率化――Wi-Fi環境がホテル・旅館にもたらすメリット

    Wi-Fi導入は宿泊施設にも大きなメリットをもたらす訪日外国人をは…

  4. ICT×観光

    100年を超えて日本のインバウンド事業に取り組み続ける――JTB様インタビュー

    日本は今、国をあげて観光立国を目指しており、訪日外国人が増加し続けてい…

最近の記事

2018年6月
« 5月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
PAGE TOP