ICT×教育

新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善とは

■新学習指導要領の改訂でポイントとなる「主体的・対話的で深い学び」

前回まで、静岡県の掛川西高等学校と掛川市が実現した「掛川城プロジェクションマッピング」に焦点を当て、プロジェクトを導いた同校の吉川牧人先生へのインタビューをお届けしてきました(前編後編)。このプロジェクトは、ICTを活用したアクティブ・ラーニングの先進的な事例と言え、2020年から本格実施される新学習指導要領で重視されている「主体的・対話的で深い学びの実現」「社会に開かれた教育」を実現した活動と評価されています。今回は、改めてこうした学びに注目してみます。

新学習指導要領で重要なポイントとなっている「主体的・対話的で深い学び」では、知識の理解の質を高め、資質・能力を育むことが目指され、学校の授業改善の方向性として、以下が示されています。
●小・中学校:これまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により、子供たちの知識の理解の質の向上を図り、これからの時代に求められる資質・能力を育んでいく
●高等学校:社会で求められる資質・能力を育み、生涯にわたって探究を深める未来の創り手として送り出していく

一方、アクティブ・ラーニングは「能動的学修」を指し、数年前から教育現場で頻繁に取り沙汰され、現在に至るまで、その手法が各所で試され、取り入れられています。
従来の授業は知識の伝達・注入を中心としたものでしたが、アクティブ・ラーニングで目指される姿は、教員と学生が意思疎通を図り、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場です。その具体的な方法として、発見学習や問題解決学習、体験学習、調査学習、グループディスカッション、ディベート、グループワークなどが知られています。

<ココまでのまとめ>
・新学習指導要領で重要なポイントとなっている「主体的・対話的で深い学び」では知識の理解の質を高め、資質・能力を育むことが期待されている。
・アクティブ・ラーニングでは、教員と学生が意思疎通を図り、一緒になって切磋琢磨するなど、能動的に学ぶことが目指されている。

<参考資料>
文部科学省 学習指導要領のポイント等

■「アクティブ・ラーニング」は、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために共有すべき授業改善の視点

新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」という言葉から「アクティブ・ラーニング」を思い浮かべる読者は多いことでしょう。新学習指導要領に「アクティブ・ラーニング」という言葉は記載されていませんが、「主体的・対話的で深い学び」と目指されている内容は同様であると考えられています。

「主体的・対話的で深い学び」と「アクティブ・ラーニング」の関連については、2017年3月に発表された新学習指導要領案に対するパブリックコメントの結果からうかがい知れます。文部科学省は、その中で、「『アクティブ・ラーニング』については、子供たちの『主体的・対話的で深い学び』を実現するために共有すべき授業改善の視点として、その位置付けを明確にする」ことを記し、新学習指導要領では、法令の形式の問題から「アクティブ・ラーニング」という言葉自体は規定していないが、「主体的・対話的で深い学び」の実現のための授業改善について規定したとしていました。
併せて、新学習指導要領で規定している「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」について、文部科学省は、その推進のために「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善のための実践研究」を進めています。

<ココまでのまとめ>
・文部科学省が互いの関連を示しているように、「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニング」で目指されている内容は同様と言える。

<参考資料>
文部科学省 新学習指導要領(本文、解説、資料等) 改訂案に対するパブリック・コメントの結果
文部科学省 主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の推進

■「主体的・対話的で深い学び」の実践例、ICTの活用事例

主体的・対話的で深い学びの実現に向け、アクティブ・ラーニング型の取り組みとしてどのような教育が実施されているか、みてみましょう。
前述の「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善のための実践研究」では、2018年5月に「アクティブ・ラーニング&カリキュラム・マネジメントサミット2018」で発表された研究結果が公開されています。

例えば、群馬県立安中総合学園高等学校では、「高校生のライフデザイン講座」で大学生と共同学習を行う授業を実施したり、大学生や社会人ボランティアスタッフとの対話を通じて未来への自発性や意欲を日常の行動に結びつけることを目指したキャリア学習プログラム「未来の教室」を実施しています。
また、群馬県立吉井高等学校では、ICT活用をテーマにアクティブラーニングの観点から授業改善を実施。教室にプロジェクターと書画カメラの設置によって生徒が解答したプリントを投影するような発表活動が行えるようになり、それに加えてタブレットPCを活用し、グループ学習で回答や意見の共有、発表を行ったり、実技科目でカメラ機能を使って実際の動きやよくできた生徒の実演を共有するなどしています。

吉井高等学校の事例では、グループ学習でICT活用が有効だったことが報告されています。ICT活用は、教育の情報化が求められ、学校の環境整備が進められている現在、アクティブ・ラーニングにおける有効性が期待されていると言えるでしょう。

文部科学省の「次世代の教育情報化推進事業『情報教育の推進等に関する調査研究』」には、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善についてまとめられています。この中の「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた ICT活用の在り方と質的評価」では、2017年度ICT活用推進校(ICT-School)の事例が紹介されています。
例えば、「一次関数の利用」(中学校第2学年)では、タブレットPC、電子黒板などを使って実験や発表などを行い、グループ活動や対話が多くの気づきにつながっています。

仙台市立六郷小学校では、「ジグソー学習」(グループ学習の一種で、グループの中だけで議論するのではなく、議題をパズルのピースのように分割して担当を割り振り、担当課題ごとに出先の会議[エキスパートグループ]に参加し、そこで得た情報を持ち帰り、自分のグループ[ジグソーグループ]で再共有することによって理解を深める学習方法)を実施。タブレット導入により動画やインターネットを活用することで児童の理解や意欲を高めています。

新学習指導要領実施に際して重要になってくるのは、「主体的」「対話的」「深い」といった抽象的なキーワードに対し、グループワークなどアクティブ・ラーニングの具体的な手法として教育に落とし込むことです。掛川西高等学校の吉川先生がインタビューでおっしゃっていた「一斉型の授業・講義が、崩れようとしている今、大事なのは生徒と一緒に新しい授業を作っていくこと」「生徒目線のICT環境整備」といった観点や意識の持ち方も、そのための重要なポイントのひとつと言えるのではないでしょうか。

<ココまでのまとめ>
・群馬県立安中総合学園高等学校では、大学生や社会人ボランティアスタッフとの共同学習を実施。
・アクティブ・ラーニングにおいて、ICT活用の有効性が期待される。プロジェクターや電子黒板、タブレットPCを利用したグループ学習、発表活動が実施されている。

<参考資料>
文部科学省 「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善のための実践研究」研究発表(平成30年5月9日,10日)
文部科学省 次世代の教育情報化推進事業「情報教育の推進等に関する調査研究」
仙台六郷小学校 無線LANとタブレットを活用した学習で、理解度の高いアクティブ・ラーニングを実施

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