ICT×観光

『観光先進国』の実現に向けたアクションプログラム。さまざまな領域で促されるICTの活用

■「観光ビジョン実現プログラム2018」主要施策におけるICT

2018年6月に政府が発表した「観光ビジョン実現プログラム2018」は、今後1年を目途とした政府の行動計画として発表されたものです。前回、その概要を紹介し、Wi-Fi環境の整備や拡充についてまとめました。今回は、Wi-Fi環境などをインフラとして活用するその他のICTに関するビジョンについて注目してみます。

まずは、「『観光ビジョン実現プログラム2018』の概要」で、どういったICTや関連する新しい技術が紹介されているかみてみましょう。同資料では、『観光先進国』実現のための3つの柱として、以下のようなものが挙がっています。

①観光資源の保存と活用のレベルアップ
・文化財における多言語対応およびVR等最新技術を活用した日本文化の魅力発信
・地方における免税店の免税手続電子化に向けたシステム開発
・新たな観光資源の開拓のための、エンターテインメント鑑賞を促進するチケット購入の容易化やVRなどの最新技術の活用
②世界水準の旅行サービスの実現
・顔認証技術を活用した自動化ゲートやバイオカートを導入した空港の拡大
・最先端技術およびシステムの導入による、旅客手続や動線全体の円滑化
・スマートフォンなどによる公共交通機関の運行情報提供の充実
 新幹線・在来線特急のインターネット予約を海外からでも可能に
③JNTO(日本政府観光局)・DMOの大胆な改革
・訪日プロモーション:デジタルマーケティングを活用したプロモーションの高度化、JNTOウェブサイト等の充実

以上のように、VRや顔認証技術などといった新しい技術の活用や、ICTを活用した仕組みの整備だけはでなく、訪日外国人のための情報コンテンツの拡充なども想定されています。

<ココまでのまとめ>
・「観光ビジョン実現プログラム2018」には、Wi-Fi環境の整備や拡充以外にも、ICTや関連する新しい技術の活用が組み込まれている
・VRや顔認証技術など新しい技術の活用や、ICTを活用した仕組みの整備、情報発信などが挙がっている

<参考資料>
観光庁 「観光ビジョン実現プログラム2018」(観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム2018)を策定しました!
「観光ビジョン実現プログラム2018」(観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム2018)の概要

■多言語対応、キャッシュレス決済、ネットやアプリで情報発信強化――さまざまなICT活用施策

より詳しくICTの活用についてみてみましょう。「観光ビジョン実現プログラム2018」の本文では、「世界が訪れたくなる日本」を目指して、以下の3つの視点ごとに、取り組みについて詳しくまとめています。
視点1.観光資源の魅力を極め、「地方創生」の礎に
視点2.観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に
視点3.すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

ICTは、さまざまな領域でインバウンド対応を支えていますが、いずれも幾つかの目的に分かれると言えます。例えば、VRは観光資源についての情報伝達が、ゲートの自動化は出入国の手続きの円滑化が目的でしょう。どのような目的でICT活用が提示されているのか、目的別に分類してみます。

<多言語対応>
訪日外国人の受け入れ環境として最重要と言えるのが、多言語対応。その取り組みのなかで以下が挙がっています。
・公的施設の観光化の一環として、皇居、皇居東御苑、京都御所で運用する音声ガイドアプリ(日本語・英語・仏語・中国語・韓国語・西語)を周知・活用。
・病院・商業施設などの多言語音声翻訳システムの実装化を目指し、クラウド型翻訳サービスプラットフォームを活用して研究開発。また、「VoiceTra」など多言語音声翻訳システムの認知向上、普及拡大を図る。
・ウェブサイトの多言語化。

<旅行に伴う手続きの円滑化>
旅行に伴う手続きの円滑化のために、以下のようなICT活用促進が示されています。
▽決済の多様化
・訪日外国人が訪れる主要な商業施設、宿泊施設及び観光スポットで「100%のキャッシュレス決済対応」及び「100%のクレジットカード決済端末のIC対応」を実現。商店街にキャッシュレス端末を導入したり、いざというときのために、訪日外国人向けATMを整備。
・決済手段の多様化に対応すべくスマートフォン決済や電子決済などの新たな決済手段の導入についても促進。
・地方における免税店の拡大、免税手続電子化に向けてシステムを開発。
▽予約・手配
・公的施設、公共交通機関のインターネット予約やタクシー配車アプリの利便性向上。宿泊施設の空室情報の提供体制強化など。
▽出入国手続き
・顔認証技術を活用した自動化ゲートやバイオカート、税関検査場電子申告ゲートを導入した空港の拡大。

<情報発信>
ウェブサイトやSNS、アプリを使ったユーザーへの情報提供は、誘致段階でも、訪日時でも重要。以下のような事例が挙がっています。
・迎賓館の魅力を分かりやすく紹介するため、スマートフォン用アプリの試験運用を行う。
・公共デジタルサイネージへの広告掲出に係る屋外広告物規制の運用の弾力化。
・JNTOのプロモーション活動や関連省庁の情報発信の強化。

関連して、観光資源の開発やコンテンツを充実させるための整備の面でも、ICT活用が挙げられています。
VRは、日本文化や文化財の魅力発信のほか、最先端観光のひとつの形として活用が促されています。そのため、国宝・重要文化財のデジタルアーカイブ化や、公共及び民間の保有する観光情報のデータを利活用した観光クラウドシステムを導入なども挙がっています。

ほかにも、古民家を宿泊施設や観光資源として再生させるためのクラウドファンディングや、観光客の動態や購買の情報、ウェブサイトやスマホアプリの利用状況などの把握など、JNTOやDMOの戦略に役立つデータ利活用にも、ICTが関連していると言えるでしょう。

<ココまでのまとめ>
・多言語対応、決済や予約、出入国などの手続きの円滑化、ユーザーへの情報やコンテンツの提供などにおいて、ICT活用が促されている
・クラウドファンディングや、観光データの利活用など、ツールや電子データの活用もICTが担っている

<参考資料>
観光ビジョン実現プログラム 2018 -世界が訪れたくなる日本を目指して-
(観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム 2018)

「観光ビジョン実現プログラム2018」は、「『観光先進国』の実現に向けて、本プログラムを政府一丸、官民一体で着実に実行していく」としています。
インバウンド需要の取り込みを図るため、①観光資源の保存と活用のレベルアップ②世界水準の旅行サービスの実現③JNTO・DMOの大胆な改革という3つの柱を中心に、今後ICT技術の活用がより一層進んでいくことになるでしょう。

【関連リンク】
訪日外国人旅行者数4,000万人達成に向けて。Wi-Fi環境整備で「誰もが一人歩きできる環境」を
進まない旅館のインバウンド対策。訪日外国人増加に伴い求められる環境整備【シリーズ「日本の観光立国とICT」】
公衆無線LANがたくさんあって認証が面倒?――サービスを相互接続する取り組み「Wi-Cert」
観光客向けWi-Fi設置の宿泊施設・自治体の例【シリーズ「日本の観光立国とICT」】
観光庁が推進。観光地域づくりの担い手として期待される「日本版DMO」

関連記事

  1. ICT×観光

    ホテル・旅館のインバウンド需要への取り組み【シリーズ「日本の観光立国とICT」】

    ■期待される日本のWi-Fi普及観光庁が主導する「訪日旅行促進事業…

  2. ICT×観光

    訪日外国人旅行者数4,000万人達成に向けて。Wi-Fi環境整備で「誰もが一人歩きできる環境」を

    ■「既成概念にとらわれない大胆な施策」――政府が「観光ビジョン実現プロ…

  3. ビジネス

    制作会社の周辺機器事情 第4回

    複合機でスキャンしたデータを共有するならNASの活用がおすすめこん…

  4. ICT×観光

    食、温泉、酒、アニメ……「テーマ別観光」を促進し、地方誘客を図る取り組み

    ■観光庁が「テーマ別観光による地方誘客事業」で17件を選定訪日外国…

  5. ICT×観光

    公衆Wi-Fiは危険?設置時に覚えておくべきセキュリティー対策とは?

    公衆Wi-Fiの危険性先日、ソフトバンクグループの孫正義社長が、「…

最近の記事

2018年12月
« 11月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  
PAGE TOP