ICT×観光

スマホの普及で急速にICT化するタクシー。自治体でも実験が盛んに。

中国の配車サービス大手の「DiDi」を運営するDidi Chuxing(滴滴出行)がソフトバンクと設立した合弁会社であるDiDiモビリティジャパンは、2018年9月から大阪で、タクシー配車プラットフォームを提供開始しました。配車アプリを使い、AIを活用した高度な分析・予測テクノロジーによって、タクシーに「乗りたい」乗客と、「乗せたい」運転手をマッチングさせるといいます。「DiDi」は北京など400都市以上で提供されており、この大阪でのサービス提供開始で日本に進出しました。

訪日外国人の足となる交通機関は観光にとっても要。観光立国の実現を目指してICTも積極的に活用されています。今回は、交通機関、その中でも特にタクシーに焦点を当てて、どのようにICT化が進んでいるかみてみましょう。

■キャッシュレス決済、オンライン予約……交通のICT化で改善されることとは?

交通のICT化で求められること、必要になることはどういったことでしょう。
政府が重点を置いている点に注目してみます。政府は「観光ビジョン実現プログラム2018」で、交通のICT化に関して、
・キャッシュレス決済のためのスマートフォン決済や電子決済など新たな決済手段の導入
・訪日外国人旅行者が移動中に情報の円滑な収集・発信できるよう交通機関を中心に無料Wi-Fi環境を整備するなど(新幹線全駅、鉄道駅やバスターミナル、鉄道車両やバス車両など)、多面的な通信環境の改善
・交通系ICカードやスマートフォンなどと共通クラウド基盤を連携・活用し、交通の利便性を向上
・日本の配車アプリの多言語化、多言語対応タブレット活用で訪日外国人旅行者が母国と同じようにタクシーを利用できる環境を整備
・スマートフォンなどによる運行情報などの提供の充実を図るためにオープンデータ化を推進
といった点を重点に掲げています。

中には、タクシーや配車アプリを指した内容もあり、タクシーが交通の分野で改善が求められる領域であることがうかがえます。これに応じて、現在、国や自治体などで取り組みが進んでいます。

例えば、福岡市では、AI・IoTなどを活用して社会課題の解決や生活の質の向上などにつなげる実証実験プロジェクトを進めています。その一つとして、公共施設や商業施設、タクシーなどのキャッシュレス化を支援しており、タクシーは2018年10月30日から実証実験がスタートしました。

また、JR東日本と東急電鉄は、東日本地区の地方観光拠点で、観光客が駅や空港からの2次交通(タクシーのほか、バス、AI型オンデマンド交通、シェアカーなど)をスマートフォンなどで検索・予約・決済してシームレスに移動できるよう、国や自治体との連携に取り組んでいます。
2019年春には、「静岡デスティネーションキャンペーン」で実証実験が実施される予定で、この発表でも打ち出されている「MaaS(Mobility as a Service)」は、スマートフォンなどを使ってシームレスに複数の交通機関を乗り継ぎ利用可能にすることで、ユーザーの利便性を高め、移動を効率化しようというものです。

<ココまでのまとめ>
・交通のICT化については、政府が「観光ビジョン実現プログラム2018」で、キャッシュレス決済、無料Wi-Fi環境整備、データ基盤の連携やオープンデータ化などを挙げている。
・キャッシュレス化、スマートフォンなどを使ったシームレスな交通利用の実現にむけ、現在、実証実験が行われるなど取り組みが進んでいる。

<参考資料>
・観光ビジョン実現プログラム2018
http://topics.buffalo.jp/?p=1846
・福岡市 実証実験フルサポート事業 キャッシュレス実証実験
http://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/mirai/fullsupport_3.html
・JR東日本と東急電鉄が「観光型MaaS」により、シームレスな新しい旅を実現します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000315.000010686.html

■大手Uberも国内タクシー業界とICT化で利便性向上を図る

タクシーは、交通機関の中でも各地域により密着しており、急速にICT化が進んでいるサービスの一つと言えます。冒頭のDiDiをはじめ、グローバルで競争する配車サービスなどの取り組みが取り沙汰されることもあり、ご存じの方も多いでしょう。

特にニュースで多く名前を聞くのは米国発の配車サービス大手、「Uber」。Uberは地域での取り組みもさかんであり、兵庫県淡路島で、タクシー会社、兵庫県淡路県民局との三者で、配車サービス導入の実証実験を実施しています。これは、国内外からの訪問客や住民の島内交通の向上を目指した施策の一環として実施されています。Uberはまた、9月から名古屋でタクシー配車サービスを開始しました。

DiDiやUberの配車サービスは、配車アプリによってタクシーの利便性向上しようというものです。利用者がスマートフォンを所持していることと、それを利用できる通信環境が整備されていることが前提になります。場所を問わずに移動しながらインターネットが利用できるスマートフォンが、タクシーとのサービスの相性がICT化を強く促進したと言えるでしょう。

国内のタクシー提供者は、ICT化による利用者の利便性向上について、どのようにとらえているでしょうか。全国ハイヤー・タクシー連合会は、2016年に打ち出した「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」の中で、配車アプリの利用を想定し、「タクシーシェア(相乗り)」、「事前確定運賃」、「相互レイティング」などを挙げています。また、訪日外国人などの観光需要に対応するためのサービスを取り組む項目の一つとして、車内へのWi-Fi配備や多言語対応タブレットの設置などを例示しています。こうした対策で、タクシー事業の活性化を図ろうとしているのです。

<ココまでのまとめ>
・DiDiやUberは、スマートフォンのアプリでタクシーの利便性向上、交通環境を充実しようとするサービス。
・全国ハイヤー・タクシー連合会は、アプリを活用した利便性向上などを新たに取り組む事項に挙げ、タクシー事業の活性化を図ろうとしている。

<参考資料>
・Uber、淡路島においてタクシー会社・兵庫県淡路県民局との三者による 日本初となる実証実験の契約を締結
https://www.uber.com/ja-JP/newsroom/first-taxi-pilot-in-awaji/
・Uber、フジタクシーグループとの協業を実施 タクシー配車サービスを名古屋でスタート
https://www.uber.com/ja-JP/newsroom/uber-fuji-taxi-group-partnership/
・タクシー業界において今後新たに取り組む事項について
http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/Taxi_Challenge_2017.pdf

■ICTで需給を調整し業務を効率化

ICT化においては、前項で述べたユーザーの利便性向上に加え、データ利用による需給調整や業務の効率化への貢献も重要なポイントになります。

日本交通とJapanTaxiは、国土交通省の実証実験「変動迎車料金」に参加し、アプリによる配車で、これまで一律だった迎車料金を、需要が高く空車が少ない時間帯と、需要が低く空車が多い時間帯で変動させ、東京都内のタクシー車両の需給バランスを整えようと取り組んでいます。通勤時間で利用が集中する朝夕と、需要が低く空車の多い時間帯でタクシー車両の需給バランスを整えることを促し、効率的な運行を目指しています。

ここまでみてきたように、従来のタクシー利用は、ユーザーの利便性向上や効率化を目指した取り組みによってICT化が進行しています。海外からの配車アプリなど競合サービスの上陸の後押しもあって、今後も急速に進化していくでしょう。

<ココまでのまとめ>
・日本交通とJapanTaxiは、タクシー車両の需給バランスを整え、運行の効率化を図ろうとしている。
・ユーザーの利便性向上や効率化を目指して、タクシー利用のICT化が進行している。

<参考資料>
国土交通省実証実験『変動迎車料金』に参加 東京5区で時間に合わせて迎車料金を無料に
https://japantaxi.co.jp/news/cat-pr/2018/09/28/pr.html

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