インタビュー

「走るWi-Fiルーター」……。果たして、その正体とは!?

「走るWi-Fiルーター」は誰がつくったの?

 

――あなたが「走るWi-Fiルーター」の作者ですか?
そうです! 初めまして、末田卓巳(すえだ たくみ)と申します。バッファローのWi-Fiルーターを改造していて、まさかバッファローの方から連絡をいただけるとは夢にも思いませんでした(笑)。インタビューの話をいただいたときは、夢中になってルーターへの思いを込めた長文メッセージを送ってしまい、失礼しました。

――末田さんは「ルーター芸人」と呼ばれているそうですね。その由来は何ですか?
中学2年生の頃からWi-Fiルーターの改造を趣味でやっていて、工業高等専門学校(以下、高専)に入ってからそれを見た友達に「ルーター芸人じゃん!」と言われたことがきっかけです。昨年の初め頃ですかね。名称の響きがとてもよかったので、そのままもらうことにしました。

もともと僕は芸人と呼ばれる要素があって、飲み会でもよく鉄板の「スベらない話」を披露するタイプです。だから、単純に“楽しい人”というところと、Wi-Fiルーターで面白いものを作っているところを掛け合わせて「ルーター芸人」と呼ばれるようになったという感じですね。現在は「ディスプレイに繋がるルーター」と「走るルーター」の2つを公表しています。
http://www.zopfco.de/entry/router_tank
http://www.zopfco.de/entry/2016/02/02/211740


「走るWi-Fiルーター」って一体何なの?

――それではブログで話題を呼んだ「走るWi-Fiルーター」を見せていただきたいのですが。
はい、これです。Wi-Fiルーターの下部にミニ四駆でお馴染みのタミヤの履帯(いわゆるキャタピラ)がついていて、スマホで無線操作すると前後に走ります。ちょっとお見せしますね。

――「走るWi-Fiルーター」をつくろうと思ったきっかけを教えてください。

これ自体が“無意味の結晶”みたいなもので、ちゃんとした設計図を用意してつくったものではありません。つまり、「普通は動かないものが動く」というシュールさが面白いと思ったからつくっただけなんです。完全に思いつきの代物ですね。また、ブログには載せていませんがWi-Fiルーターで最初につくったのは「毎朝7時にラジオ体操が流れるWi-Fiルーター」でした。当時は高専に通っていて、朝が苦手だったので、気持ちよく起きられるようにしたいと考えてつくったんです。この初号機をつくった経験で、「Wi-Fiルーターでもっといろいろなことができる」と実感したことが「走るWi-Fiルーター」をつくるきっかけに繋がっています。

大公開! 「走るWi-Fiルーター」のつくり方

――「走るWi-Fiルーター」の制作プロセスは?

走らせるためにはタイヤか履帯が必要です。今回は戦車のようにギュインギュイン走る力強さがほしかったので、履帯を選びました。履帯を回すためにはモーターとモーターを制御する回路、回路を作動させるプログラムが必要です。このように「走らせる」というゴールに向かって、必要なものを揃えていきました。

とはいえ、Wi-Fiに履帯を付けて、それを動かすプログラムを書いたからと言って、すぐに動くものではありません。動かすためには12Vの電源を得る必要があるので、スマホ用モバイルバッテリーに昇圧回路を組み合わせたり、Wi-Fiルーター内にある汎用入出力GPIO(General Purpose Input/Output)からHブリッジ回路へ繋げて前後移動を可能にしたりと、さまざまな工夫を凝らしています。つくり方の詳細はブログに書いているので、気になる人は読んでみてください。

製作期間は2週間ほどですね。当時、全国の高専生と卒業生が集まるイベント「高専カンファレンス」というのがあって、それに間に合わせるために月の半ばからつくりはじめて、ほぼ最後の2、3日で完成させました。プログラムは当日の新幹線の中で書き終えたほど、ギリギリでしたが…。

――バッファローのWi-Fiルーターを選んだ理由を教えてください。

他社のWi-Fiルーターと比べて「調達しやすい」「情報量が多い」という点です。
バッファローのWi-Fiルーターは国際展開しているので、世界中のハッカーがWi-Fiルーターの遊び方に関する情報をネットにたくさん出しているんですよ。それにたくさん売れているぶん、ハードオフなどで中古品が安く買えるので、そこも大きな魅力ですね。

――「走るWi-Fiルーター」をつくるうえで、最も苦労した点は?
まずは電源回路ですね。
Wi-FiルーターはCPUやメモリーなど、部品が多数入っているので、走らせるためにモーターを動かそうとすると、本来の動作部分に電流が回らなくなってしまい、システムがすぐに再起動してしまうんですよ。だから、モーターに流れる電流とシステムに流れる電流を微調整するために、抵抗の本数を変えるなど、何度もトライ&エラーを繰り返しました。高専では電気の基礎を学びましたが、回路についてはほぼ素人なので、勉強しながら制作を進めました。

また、改造した機器から電波を発するのは電波法違反なので、「走るWi-Fiルーター」ではUSBドングルを使って外付けで電波を飛ばしているという点も大事なポイントです。Wi-Fiルーターは本来、開けてはいけないものなので、その点は注意が必要ですね。まぁ、この記事を見ても同じことをやろうとする人はいないと思いますが…(笑)。

――最後に、現在、小学生は夏休み期間ということなので、エンジニアリングに興味のある子どもたちにアドバイスをお願いします。

僕自身は自由研究をやろうと思ったら、夏休みが終わっていたタイプなので偉そうなことは言えませんが(笑)、1,500円ほどで買えて、子どもでも使える電子工作にぴったりのコンピュータ「IchigoJam」というものがあります。これはテレビに繋げるケーブルとキーボードを用意すれば、簡単なプログラムを書く練習ができるもの。まずは「プログラムの第一歩」を踏み出したい小学生にオススメですね。
ちなみに、僕は小学5年生からプログラムを書きはじめて、そこからハマって、高専のときはプログラミングコンテスト優秀賞もいただくことができました。だから、みなさんもあまり難しく考えないで、気軽な気持ちでプログラミングをはじめてみると面白いと思いますよ!

(取材・文:廣田喜昭)

プロフィール
末田卓巳(すえだ・たくみ)
1994年生まれ。岡山県出身。
2010年 津山工業高等専門学校入学。在学中に高専プログラミングコンテスト優秀賞を受賞。
2015年 津山工業高等専門学校卒業。FULLER株式会社入社。
「ルーター芸人」を自称し、趣味でWi-Fiルーターの改造を続ける。その活動をまとめたブログ記事「BuffaloルータをPCディスプレイにつなげた。」(2016年2月)、「走るBuffaloルータを作った。」(同年5月)が大ヒットし、エンジニアリング界隈で話題を呼ぶ。現在も最新のWi-Fiルーター作品を鋭意制作中。
※この記事はアート作品のご紹介を目的としたもので、分解・改造を推奨するものではありません。分解や改造によって生じる損害に関してはご対応いたしませんので予めご了承ください。
※電波に関する注意:本製品は、工事設計認証を受けていますので、以下の事項を おこなうと法律で罰せられることがあります。 「本製品を分解/改造すること」「本製品の裏面に貼ってある証明ラベルをはがすこと」
※この記事に関する個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

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