ICT教育

日本が考えるICT教育って?【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子ども教育はどう変わるの?」】

シリーズ前回(第1回「昨今耳にするようになったICTって、そもそも何? 」)では、「ICTの基本」についてまとめました。

今回は、「日本政府が教育現場でICTをどのように利用しようとしているのか?」というところを掘り下げていきます。
ICT教育に関する資料は、政府・文部科学省・総務省からそれぞれ発表されています。その内容を紐解いてみましょう。

■「日本再興戦略2016」に記載された“ICT教育の未来”

政府は昨年・2016年5月に「日本再興戦略2016」をまとめました。

日本再興戦略2016は、「時代が大きく変わろうとしている“歴史的な分岐点”にいる我が国を成長軌道に乗せ、世界で最も魅力的な国にするための“羅針盤”」と定義されています。

この中に「ICT教育」に関する内容があります。

そこでは「2020年(度)までに100%を目指す」として、下記3点がKPI(Key Performance Indicator/重要業績指標)に設定されています。

・授業中にITを活用して指導することができる教員の割合
・都道府県及び市町村におけるIT環境整備計画の策定率
・無線LANの普通教室への整備
つまり、2020年(度)には日本中どの教室にも無線LANが引かれていて、全ての教員がITを使いこなすことができるようになる、という目標設定です。

ちなみに、2014年度時点での達成率は、上から71.4%、31.9%、27.2%と発表されています。残り約3年でどこまで達成できるかは、今後のICT教育を考えるうえで注目のポイントと言えるでしょう。

さらに、資料を見てみると、具体案として次の4つの方針がまとめられています。

①変革の時代に求められる教育の全国展開
・各教科の特性に応じて、ITを効果的に活用する。
・小学校から体験的にプログラミング教育を体験する機会を確保する。
②教育コンソーシアムによる官民の連携強化
・文部科学省を中心に学校とIT企業などで構成する官民コンソーシアムを設立する。
・学校への外部人材の派遣などにより、IT教育の加速化を狙う。
③教員の授業力向上とIT環境整備の徹底
・教員養成・研修により、ITを活用した授業力を向上する。
・端末の「1人1台体制」を目指し、学校のIT環境を整備する。
④初等中等教育の情報化における著作権等の課題への対応
・学校現場における教育の情報化を促進する。
・クラウド上で教育コンテンツや学習情報などを共有する。

どの項目を見ても、かなり本格的にICTを教育に取り込もうという意気込みが見えます。

<ココまでのまとめ>
・政府がまとめた「日本再興戦略2016」の中にICT教育の今後の目標が設定されている。
・その目標は、2020年(度)までに「全ての教室に無線LAN完備」、「全ての教員がITを活用して授業を行う」などがある。

<参考資料>
日本再興戦略 2016 ―第4次産業革命に向けて―
日本再興戦略2016(抜粋)

■「平成27年度 文部科学白書」は“教育の情報化”に訴求

教育分野の政策を担う文部科学省は、「平成27年度 文部科学白書」の中でICT教育について触れています。

この中で、文部科学省はICTの活用に次のことを期待すると記載しています。

・学習への興味、関心を高め、わかりやすい授業を実現する。
・主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)を実現する。
・特別な支援が必要な子どもに有用である。

アクティブ・ラーニングとは、文部科学省の用語集によると、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」のこと。

つまり、ディスカッションやグループワークを取り入れた「生徒主体の教育方法」です。これらを実現するための具体策については、下記2つの視点から説明しています。

①教育の情報化
遠隔地間の学校をICTで結びコミュニケーションを図る、ICTを活用して教員の校務を効率化する、教育用コンピュータや電子黒板などを揃える・・・。いずれも一昔前では考えられなかったことですが、既に実証研究で実現しているものもあります。

たとえば、兵庫県赤穂市では2016年8月より順次、市内全ての小・中学校3校の教室に、無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイントとネットワーク対応HDMI変換ディスプレイアダプターを導入。タブレットを活用した授業を推進しています。導入以来すでに多くの効果が表れ、生徒の評判も良いようです。
赤穂市教育委員会 様 導入事例

②映像作品やICTを活用した教材の普及・奨励
教育を情報化して、ICT教育を実現するためには、ハード(電子黒板やデジタル教科書)だけでなく、コンテンツが欠かせません。

文部科学省では教育に適当と認めた映画や紙芝居を「文部科学省選定」として、普及・奨励に務めています。ちなみにコンテンツのリストには『ふたつの名前を持つ少年』『映像で学ぶ薬害シリーズ』などがあります。
また、2016年7月に発表された「教育の情報化加速化プラン ~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~」では、さらに具体的に2020年までのプランを組んでおり、ICT化を確実に進めるという文部科学省の決意が見て取れます。

<ココまでのまとめ>
・ICTを活用することにより、生徒主体のアクティブ・ラーニングの実現を目指す。
・「教育の情報化」の流れは今後ますます加速していく。

<参考資料>
平成27年度 文部科学白書 第11章 ICTの活用の推進
教育の情報化加速化プラン ~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~

■総務省「未来の学習環境をつくる」は“ICT教育の必要性”に言及

総務省は資料「未来の学習環境をつくる―ICTを活用した教育分野の情報化―」を公表し、ICTによって教育現場が変わりつつあることを説明しています。

さて、突然ですがここでちょっと質問です。
子どもから、「なぜ、僕たちにはICT教育が必要なの?」という素朴な問いを投げかけられたら、あなたは何と答えますか?

少し考えてみると、「今はコンピュータを使えることが当たり前の時代だから」「学習効率が上がるから」など、さまざまな答えが出てくると思います

総務省は資料の中でICT教育を行う理由として「生きる力を育むために必要である」と説明しています。変化の激しい時代でも、ICT教育により「自ら学び、考え、主体的に判断し、行動する力」を養うことで、子どもに生き抜く力を備えるというわけです。

たとえば、「情報リテラシー」。情報を使いこなす能力のことですが、大人でもこの力が乏しく、苦労している人がたくさんいる時代です。ICT教育により、子どものときから「たくさんの情報」を的確に触れ、「電子機器の使い方」を学び、アクティブ・ラーニングで「主体的に発表する癖」をつけておくことで、情報化社会の中で生きる力が育まれると考えられています。

<ココまでのまとめ>
・ICT教育は子どもの「生きる力」を養うために必要なもの。
・変化の激しい今の時代、自分で考え、動く癖を身につけるためにICTは不可欠。

<参考資料>
未来の学習環境をつくる―ICTを活用した教育分野の情報化―

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