ICT教育

ICTを取り入れた授業の事例【シリーズ「国が推進するICT環境の整備。ICTで子どもの教育はどう変わるの?」】

シリーズ前回 第2回「日本が考えるICT教育って? 」は、「ICT教育の実現へ向けた動き」についてまとめました。
今回は、「試験導入されたICT教育の現場」を紹介するとともに、「海外のICT教育の取り組み」についても掘り下げます。

研究レベルではICT教育は既に実現している

ICT教育は“遠い未来”の話ではありません。
すでに全国20校で「ICT教育の実証研究」が実施され、そこから得たフィードバックをもとに“教育の情報化”に取り組む自治体が増加しています。

これらの取り組みは、総務省の「フューチャースクール推進事業」および文部科学省の「学びのイノベーション事業」の活動により、推し進められています。

実証研究では、どのような「ICTを取り入れた授業」が行われたのか、気になるところですよね。いくつかの事例を見てみましょう。

◆資料作成/グループディスカッション
ICTの導入で、ディスカッションの深まりが期待されています。

従来は、授業で行われるディスカッションと言えば「事前に紙で資料を用意して、それを元に話し合いをする」というものでしたよね。
ですが、ICTを活用すると、ディスカッションは全く違うものになります。

生徒はパソコンまたはタブレットで制作した資料をディスプレイで周囲に見せながら説明します。もし、その場で新たな情報が必要になれば、手元にあるパソコンまたはタブレットでWebページを検索して、資料を再編集することも可能です。
これにより、「試行錯誤する学習」が深まると期待されています。

◆通信を使った学習
近い将来、「校舎」という狭い枠の中だけの教育はなくなるのかもしれません。
それを実現する学習方法が「ICTを使った他校との交流授業」です。
テレビ会議システムを利用すると、教室にいながらにして他校の先生や生徒と会話をすることができるため、住んでいる地域以外の“外の世界”との接触が実現します。ゆくゆくは、海外の学校と交流授業も簡単に実現することでしょう。

またICTは「家庭との連携」も可能にします。生徒が自宅のパソコンでクラウド上にある学校の教材を予習・復習したり、学校を欠席した生徒が家で授業を受けたりできるようになるかもしれません。

ここに紹介したことはほんの一例ですが、ICTの活用により、私たちが思いもしなかった教育法が次々と実現していくことでしょう。

<ココまでのまとめ>
・ICT教育では、パソコン、タブレットを使った有機的なディスカッションが実現する。
・通信により学校の枠を超え、他校や家庭との交流が可能になる。

<参考資料>
未来の学習環境をつくる―ICTを活用した教育分野の情報化―
平成27年度 文部科学白書 第11章 ICTの活用の推進

東京都教育委員会が実施している「ICT活用推進校」の取り組み

日本の首都「東京」の学校のICT教育はどの程度まで進んでいるのでしょうか?

東京都教育委員会は、ICTを活用した授業を推進するため、2015年に「ICT活用推進校」を12校指定し、ICT教育の実践に取り組んできました。その事例から、いくつかを見てみましょう。

◆小テストを撮影して、添削を共有
生徒は解答を記入した紙のワークシート(小テストのようなもの)をタブレットのカメラで撮影し、画像を教員のタブレットに転送する。教員は生徒のシートを複数ピックアップし、ディスプレイ上で添削。その様子を生徒はタブレットで見ながら、学習する。

◆インターネットから必要な情報を検索
「希望する住宅」を生徒各自で想定し、生徒同士で相手の希望に合った物件をインターネットで検索する。ユニークな物件はクラスの共有フォルダーに保存して共有。お互いに発表し合う。
適切な情報をインターネットから探し出す訓練になるとともに、話し合いがより効果的になる。

◆動画を利用した理科の実験
細胞を拡大視した顕微鏡の画面の動画をタブレットで撮影する。撮影した動画を再生し、最もよく映っているコマを画面保存し、画面の中の特定の細胞に編集ツールで印をつける。印がついた細胞の数を確認することで、細胞分裂の経過を確認する。
効率よく対象を発見できるほか、説明や観察がしやすくなっている。

◆見本を動画で確認する体育の授業
バレーボールのスパイクの動作見本をタブレットの動画で確認する。実際に、スパイクを打ち、その様子を撮影する。2つの動画を並べて見ることができる「動画比較機能」を用いて、良いところ、悪いところを確認し、動作を修正する。

<ココまでのまとめ>
・東京都教育委員会は「ICT活用推進校」を指定して、ICT教育を行った。
・ネット検索、カメラ撮影、動画・写真を用いた幅広い内容の授業が実践された。

<参考資料>
平成27年度 ICT活用推進校実践事例集(東京都教育委員会)

各学校で進むICT教育の導入

もちろん、ICT教育の実践が進んでいるのは東京だけではありません。
地方でも、公立・私立を問わず、意欲的な教育機関から順に、ICT教育の導入に取り組んでいます。

例えば北海道教育大学附属函館中学校では、360名の全生徒にタブレットを配付しました。

ここでは校内の各所にアクセスポイントを設置。どこからでもネットワークに接続できるようにしています。無線LANを通じてサーバーから教材や電子プリントを配付するほか、アンケートや生徒の健康状態チェックページの運用なども行います。

授業では、電子教科書を活用。さらにカメラ機能・レコーダー機能を利用し、自分でカメラ撮影した画像で資料作成を行ったり、発表している様子をビデオ撮影しています。臨機応変な授業で、思考力・実践力が育まれています。

タブレットの活用は授業だけにとどまらず、学校生活の充実にも寄与しています。
学級通信や連絡事項がタブレットで閲覧できるほか、ライブラリー化された学校行事の写真や動画を閲覧できたり、合唱コンクールのパート練習用データを共有したり。各シーンで有効に活用されているのです。

導入事例:北海道教育大学附属函館中学校 様

海外のICT教育の取り組みは?

海外のICT教育を研究する専門家から、このように指摘する声もあがっています。
「作文を鉛筆で原稿用紙にだけ書かせるという授業は、ICT先進国には少なくなってきている」
それくらい、海外ではICT教育が進んできています。

たとえば、オーストラリアでは、国がデジタル教材をWeb上にアップしています。教員はパソコンやタブレットなどを自由に選択して授業を行うのです。
子どもは幼稚園の年長からデジタル教材は使いはじめるので、早くからICTに慣れることができます。

また、デンマークの小学校では、小学校低学年からパソコンでプレゼンテーションを作って、みんなの前で自分の意見をプレゼンするという話もあります。早いうちからデジタルでの資料の作り方を学ぶことになりますね。

ちょっと変わったところでは、「次世代の学校」と称される、元Googleのエンジニアが設立した「Alt School」があります。この学校は、教師の半数がGoogleのエンジニア出身だと言われていることからもわかるように「ICT教育」に力を入れています。
Facebookの創業者マークザッカーバーグの支援などもあり、Alt Schoolは現在、全米に急速拡大中です。トップクラスのプログラマーからプログラミングを習うことができるのはもちろん、生徒の学習進捗状況や先生のフィードバックをシステムで共有しているため、生徒1人ひとりにあった「個別学習」を行っているそうです。技術の発展とともに官民ともに関心が高まる教育のICT活用。今後も新たな事例はさらに追加されていくでしょう。

日本にもAlt Schoolが進出する可能性はゼロではないでしょうし、独自のICT教育に特化した塾やスクールが生まれてくるかもしれませんね。

<ココまでのまとめ>
・海外のICT先進国では、パソコンやタブレットを使った授業が当たり前になっている。
・元Googleのエンジニアがつくった「Alt School」が全米で注目を集めている。

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