ICT観光

国が取り組む、インバウンド需要向けICTの強化【シリーズ「日本の観光立国とICT」】

■総務省が推進する「SAQ2(サクサク)Japan Project」

観光庁が行った「外国人旅行者アンケート」において、訪日外国人旅行者が「旅行中困ったこと」の回答1位が「無料公衆無線LAN環境」になっていることは前回もお伝えした通りです。

政府は東京オリンピックが開催される2020年に4,000万人(2015年の2倍の数字)の訪日外国人旅行者数を目標に掲げ、「観光先進国」を目指すと公言しています。しかし、「Wi-Fiの不備」はそれを実現するうえで大きな課題になっています。

この課題に対して、政府はどのような対策をとっているのでしょうか?

具体的に見てみると、観光庁は総務省と連携して「無料公衆無線LAN整備促進協議会」を設置しています。現在、協議会内で無料公衆Wi-Fiの環境整備だけでなく、Wi-Fiを利用できる場所の周知、利用手続きの簡素化などの検討を行っています。

また、総務省は訪日外国人がICTを「サクサク」利用できるように、「選べて(Selectable)、使いやすく(Accessible)、高品質な(Quality)、ICT利用環境を実現すること」を目指した「SAQ2(サクサク)Japan Project」に取り組んでいます。

「SAQ2 Japan Project」の柱は以下の4点です。
1.無料Wi-Fiの整備促進と利用円滑化
2.国内発行SIMへの差替え等によるスマートフォン・携帯電話利用の円滑化
3.国際ローミング料金の低廉化
4.「言葉の壁」をなくす「グローバルコミュニケーション計画」の推進

このプロジェクトは2014年からはじまっていて、現在もさまざまな機関や事業者と連携しながら進められています。

<ココまでのまとめ>
・観光庁は無料公衆無線LAN整備促進協議会を設置し、環境整備や周知に取り組んでいる。
・総務省は訪日外国人がICTをサクサク利用できるように「SAQ2(サクサク)Japan Project」をスタート。

<参考資料>
観光庁│「明日の日本を支える観光ビジョン」-世界が訪れたくなる日本へ- 概要
観光庁│訪日外国人旅行者の受入環境整備
総務省│Wi-Fi整備についての現状と課題

■国が一丸となって訪日外国人旅行者の受け入れ態勢を整えている

急増する訪日外国人旅行者の受け入れ態勢を整えるために、政府はさまざまな補助や支援を行っています。

たとえば、総務省が行っている「観光・防災Wi-Fiステーション整備事業」。これは地域のWi-Fi環境整備のために費用補助を行う事業で、地方公共団体・第3セクターを対象に公募したところ、平成28年度には50団体から応募があったそうです。審査の結果、山形県酒田市や石川県穴水町、鳥取県琴浦町、愛媛県大洲市、宮崎県小林市などが補助を受けて、公衆Wi-Fiの環境整備を行うことが決まりました。

一方、観光庁は平成28年に下記3つの支援事業を行いました。

<宿泊施設インバウンド対応支援事業>
複数の宿泊事業者やその他関係する事業者等により構成される団体を対象にして、館内および客室内のWi-Fi整備、トイレの洋式化、テレビの国際放送設備の整備、案内表示の多言語化、自社サイトの多言語化などを補助する。補助金上限は1宿泊事業者あたり100万円。

<交通サービスインバウンド対応支援事業>
訪日外国人旅行者の空港などからの交通アクセスを容易にするための補助金で、目的は公衆Wi-Fiの整備、案内標識・可変式情報表示装置・ホームページの多言語化など。経費の1/3の助成を受けることができる。

<地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業>
政府が進める「手ぶら観光」(荷物や土産品等を一時預かりしたり、空港や駅、ホテル、商業施設、海外の自宅へ配送したりするサービスを提供する)を認定、または認定する見込みがある者を対象にして、手荷物集荷場の整備・機能強化、案内標識やデジタルサイネージ等の多言語化を補助する。経費の1/3の助成を受けることができる。

いずれも、Wi-Fiやホームページ、デジタルサイネージといった、ICTの活用がうたわれている点が特徴的です。
このように事業者や自治体だけでなく、国が協力しながら一丸となって、ICTを活用しつつ、訪日外国人旅行者の受け入れ態勢を整えていることがわかります。

<ココまでのまとめ>
・総務省は「観光・防災Wi-Fiステーション整備事業」において、地域のWi-Fi整備の補償をしている。
・観光庁は宿泊施設、交通、地方での諸費拡大など、3つの柱で支援事業を行っている。

<参考資料>
観光庁│訪日外国人旅行者の受入環境の整備に関する事業
国土交通省│訪日外国人旅行者受入加速化事業実施要領

■観光ビッグデータが地域の救世主になる?

観光庁は受け入れ態勢だけでなく、さらなる訪日外国衣人旅行者の増加を目的にICTの力を活用した取り組みを行っています。

訪日外国人旅行者を増やすうえでネックになっているのは、東京や大阪など、いわゆるゴールデンルートに旅行者が集中し、地域まで旅行者の足が伸びていないことであるという点も指摘されています。

それをクリアするためのハードルとなっていたのは「訪日外国人旅行者がどのようなルートで周遊しているのか把握できていない」ことでした。ゴールデンルートに集中していることはわかっていたものの、旅行者の細かい動向までは掴めていなかったため、有効な施策を検討・実施することが困難な状況だったのです。

暗闇の中を手探りで進むような、まさに「暗中模索」の状態だったわけです。これではしっかりした効果をあげるクリーンヒットを打つ確率は低くなってしまいます。

そこで登場したのが、今注目を集めている「観光ビッグデータ」です。これは簡単に言えば、不特定多数の旅行者の行動・動向データを集めたもの。ICTの発達によって、旅行者がスマートフォンなどでSNSやWebサイトを閲覧する際に、「位置情報」(個人情報は一切含まれない統計的なデータ)を把握することができるようになりました。

現在はこのデータを活用して、観光地における来訪者の行動・動態について分析するシステムの構築を目指して調査を行っている段階です。観光庁が平成28年3月に中間とりまとめとして発表した「平成27年度 ICTを活用した訪日外国人観光動態調査事業実施報告書 (概要)」を見ると、訪日外国人旅行者25,759人のGPSデータ、116,389件のSNSデータを取得して分析したことがわかります。

分析方法は、GPS機能を使って季節ごとの周遊ルートの違いを調査したり、Twitterのつぶやきの内容から観光スポットに抱く感情を調査したり、というもの。その結果、SNSでは新宿、富士山、足利フラワーパーク、太宰府天満宮などが人気など、以前はわからなかったことが明確になってきています。

観光ビッグデータの活用方法は、まだ確立している段階。分析結果が、受け入れ態勢のさらなる向上など、より良い地域の観光活性化に役立てられることを期待します。

<ココまでのまとめ>
・観光庁はICTを地域の観光需要喚起に活用しようと調査を進めている。
・旅行者の行動・動向を集めた「観光ビッグデータ」に期待が集まっている。

<参考資料>
観光庁│観光ビッグデータを活用した観光振興/GPSを利用した観光行動の調査分析

観光庁│平成27年度 ICTを活用した訪日外国人観光動態調査 事業実施報告書 (概要)

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